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【藤文様】視覚にもおいしい「かざり羹」

あっという間に4月も終わりですね。新年度の慌ただしさと新しい時代への高揚感で、今月はいつも以上に時が進むのが早いように感じます。

我が家ではこの春から子どもたちが保育園・幼稚園に入園し、私はほぼ4年ぶりに落ち着いて仕事ができるようになりました。(園の先生方には感謝感謝です...)

すこし余裕ができたので、お昼休みに仕事場近くの鞍馬口通り界隈へ行ってきました。この辺りは狭いエリアにミシュランの星が付いたお蕎麦屋さんや銭湯カフェ、唐紙屋さんなど面白いお店がぎゅっと集まっています。大人向きの落ち着いたお店が多いので機会があればぜひ!とおすすめしたい場所です。

今回は友人おすすめの「うめぞの茶房」さんへ。

 

こちらは老舗の甘味処「梅園」の3代目さんがオープンした“新しい”和菓子のお店。「かざり羹」という羹の上にフルーツやクリームを飾った、目にも麗しいお菓子が楽しめます。

 

オーダーとお会計をすませてから二階のイートインスペースへ。天窓から光がそそぐ、落ち着いた空間です。

 

姉と一緒に(左から)カカオ、よもぎ、レモンをオーダーしました。うわ〜、まず見た目が美しい……カカオの上にはクリーム・一味・金柑のピール、よもぎの上にはきな粉の餡とフルーツなど、素材のマリアージュも面白い! 小さな世界に味覚と視覚を喜ばせる仕掛けが詰まっていました。

レモンとよもぎは香りの余韻がなんとも爽やか。もうこんな季節なんやな〜と初夏に思いを馳せたり……保活に一時保育にと駆け回っていた数ヶ月前には考えられなかった閑かな時間を過ごせました。

爽やかなお菓子の後には、春らしい文様をご紹介。

 

たわわに垂れる「藤」は優美で柔らかい印象。他の樹木に絡みつきながら繁殖していくので「子孫繁栄」の象徴、また「ふじ=不二、不死」につながるとも言われています。

この作品は父の創作能衣装。絡みつく藤に「女性の情念」を重ね合わせたのだとか。わお……こんな解釈もあるのですね。

伝統をベースに新しいものを創る時、私はどうしても「新しい理念」や「コンセプト」を生み出さなければと頭でっかちになってしまうのですが、父の作品や「かざり羹」のようにまず「圧倒的に美しい、心地よい、おいしい」といった言葉のいらない感性にも訴えかけていくものでないと、皆さまの目にも心にも留まらないなぁ……と考える春の日でした。

うめぞの茶房
11:00~18:30(L.O 18:00)
京都市北区紫野東藤ノ森町11−1
Tel. 075-432-5088

PROFILE 長艸 歩(ながくさ あゆむ)

1987年京都市生まれ。芸術大学にて絵画を学び、卒業後は京都の老舗日本茶メーカーで販売や広報として勤務。結婚、出産を機に夫の家業である「長艸繡巧房」にて伝統的な京都の刺繡「京繡(きょうぬい)」を学びはじめる。 現在は3歳と1歳の女の子を育てながら刺繡の技術の習得と、いままで触れる機会のなかったディープな京都文化の吸収に励んでいます。 Instagram(@sica.seka)でも刺繡や文様のことを発信しています。


 イベント告知 
『繡えども繡えども』刊行記念 トークイベント開催!
京繡工芸士・長艸敏明 × ファッションデザイナー・串野真也


「日本のわざ・伝統と革新」をテーマに、 2019年5月11日(土)18時より開催されます。

■銀座 蔦屋書店
東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F
tel. 03-3575-7755

下記からぜひお申込みくださいませ。
銀座 蔦屋書店HP

※ミモレ編集部スタッフによるアテンドはございません。

 

<5月9日 刊行予定!>
『繡えども繡えども』

著者 長艸敏明
A24判 192ページ/ 講談社

長艸敏明氏は歩さんの義父。刺繡作家、京繡伝統工芸士である氏の作品集が出版されます。着物や帯のほか、季節ごとのしつらえや婚礼衣装などの祝い着、祭事の修復や復元まで京繡の第一人者である著者の“刺繡の力”を堪能できる100点を掲載。

構成/山本忍(講談社)