二人の「教え子」がお妃になるという「偶然」


雙葉学園はカトリック系のサン・モール修道会のミッションスクールで、現在では「幼きイエスの会」の系列に入っている。東京・四谷にある雙葉学園が本家にあたり、田園調布雙葉、横浜雙葉、静岡雙葉、福岡雙葉も系列校である。

「徳においては純真に、義務においては堅実に」の校訓が、全国の雙葉系列校共通のものとなっている。

かつて、雙葉学園のシスターは、今より厳格で、服装も顔意外どこも出ていないカトリックの典型的な修道女スタイルだった。

学校の勉強を指導するシスターをマザーと呼び、給食を作るシスターをスールと呼ぶなど、フランスのパリに修道会の本部がある学校ならではの西欧の修道院教育の影響が色濃く出ているのが特徴だった。

 

当然、英語のほかに正課としてフランス語の授業もあり、課外授業のフランス語は、日本語をまったく話さないフランス人教師が時間をかけて、

「砂に水がしみこむように自然に」

教える教育だったという。
 
生活指導もきめ細かく、「寄り道禁止」「髪の毛は肩についたら三つ編みにする」「お言葉遣いを丁寧に」などと注意された。

たとえば、縄跳びをしているときでも、「入れて」ではなく、「お入れになって」と言い、「ごきげんよう」「おそれいります」「ご免あそばせ」などと、ごく自然に丁寧な言葉遣いや物腰を身につけさせる教育であった。

昭和15年(1940)に、雙葉幼稚園で美智子さまを教えた和田郁子先生は、美智子さまの幼い頃の様子をこう語ってくれた。

「美智子さまは協調性があって、お友だちと仲よく遊んでいらっしゃいました。お髪がくるくるカールしたお子さまで、幼稚園でございますから特別の勉強はございませんでしたが、折り紙、お絵描き、なんでもお上手になさいました」

和田先生は美智子さまのご成婚以来、毎年10月20日の美智子さまのお誕生日に招待を受けている。一度の欠席もしないで、毎年出掛けているという。

「私の旧姓は野原といいます。クラス会で美智子さまとお目にかかるときは、『野原先生、やっぱり野原先生のほうがいいわね』とおっしゃって、私を旧姓でお呼びになります。

美智子さまのお母さま、富美子さんは美智子さまが幼稚園に入られたころにお目にかかりましたが、すっきりと背が高い方でした。お子さまの家庭でのおしつけは、きちんとなさっていることがわかりましたね。お子さまを見ていると、ご家庭の様子がわかるのです。幼稚園時代の美智子さまは活発で、どなたとも分け隔てなくお遊びになる、ということが正田家の教育方針であったと思います」