ゲイで女装家の高校教師・原田のぶお(古田新太)が主役の学園ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)

今期のドラマはLGBTが主人公のドラマが集中し、話題になっています。前回ご紹介した『きのう何食べた?』(テレビ東京系)をはじめ、『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』(NHK総合)、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)と乱立状態。人気の理由とは?古田新太が演じるゲイで女装家の教師役の存在にひとつの答えがありそうです。


古田新太がゲイで女装家の高校教師を好演


これまでも地上波ドラマの中で同性同士の恋愛やLGBTとして生きる姿に焦点を当てた作品はありました。でもそれは、医療や刑事もののような定番ジャンルではなく、異色ドラマとして扱われてきました。その流れを変えたのは言うまでもなく、昨年の『おっさんずラブ』(テレビ朝日)ブームが影響していることは間違いありません。「BL(ボーイズラブ)」が恋愛ドラマの中でメジャー化していくきっかけを作った『おっさんずラブ』の流れを汲んで、今期はそれに応えています。おっさん同士の恋愛劇も描く『きのう何食べた?』、ゲイの少年と腐女子との青春群像劇『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』が続いています。

またLGBTが主役のドラマとして敢えて区分けすると、『俺のスカート、どこ行った?』と『家政夫のミタゾノ』もそこに加わります。『家政夫のミタゾノ』は主役の松岡昌宏(TOKIO)が扮する家政夫役の女装理由は明らかにされていないので、厳密には「トランスヴェスタイト」。シリーズ3作品目に入った人気作で、松岡の怪演はジャニーズ出演ドラマの新境地と言えるもの。そして、さらに挑戦的な作品であるのが『俺スカ』こと『俺のスカート、どこ行った?』です。LGBTが主役のドラマの中で今までにはなかったキャラクター像を作り出し、進化系とも言える作品です。

『俺スカ』は毎週土曜10時に日本テレビ系列で放送されているコメディタッチの学園もので、原作なしのオリジナル連続ドラマです。主役は個性派俳優の古田新太が演じるゲイで女装家の高校教師・原田のぶお。「いつもは52歳の男の人のことが好きななおじさんが、学校に来るときは女装する」という設定です。豪林館学園高校2年3組の担任として新たに赴任する話から始まり、永瀬廉(King&Prince)、長尾謙杜(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、道枝駿佑(同)ら演じる生徒たちの中で起こる問題を原田のぶお(古田新太)がスカっと解決させます。ドラマも中盤戦に入るところで、生徒たちをはじめ、同じ高校の教師役である松下奈緒や白石麻衣(乃木坂46)らとの関係性の深まりも楽しめます。「笑って、泣ける」学園ドラマの王道作品とも言えるでしょう。


「キモイなんて決めつけないでくれない?」凄みのある原田のぶお節が売り


第一話で放った台詞「お前程度のチンケな常識で(ゲイで女装家を)キモイなんて決めつけないでくれない?」を筆頭に、凄みのある原田のぶお節がこのドラマの売りです。その出で立ちから説明いらずで、酸いも甘いも経験してきた原田のぶおだからこそ生まれる台詞が説得力を増します。SNS上では「原田のぶおの台詞が突き刺さる」「言葉がいつも深い」「毎回心にグッとする」などの声がツイートされ、共感を得ている様子です。

そして、凄まじいほど正論を臆せず発言する原田のぶおの姿は「マツコ・デッラクスを彷彿させる」という声も一部で上がっています。ドラマ以外の地上波の番組全般でも、原田のぶお節のような発言を担うのはいわゆる「おネエタレント」であることも多く、これまでそんなオネエタレントが活躍してきました。バラエティ番組や情報番組の中でおネエタレントという「枠」の中でそんな役割を担ってきたわけですが、番組の顔となって枠を超えた存在を作ったのはマツコ・デラックスです。枠にはめられた概念を飛び越え、マツコ・デラックスという人物そのものが好感を得ているのではないでしょうか。今現在の活躍ぶりがそれを物語っています。そして、マツコ・デラックスの人気が日本におけるLGBT普及の一端を担っていると言っていいでしょう。

LGBTという言葉こそまだ聞きなれないものの、同性愛も女装も男装も個性として受け入れ、理解する層は確実に広がっています。そんな下地が作られているからこそ、ドラマの中で最も愛されるべき中心人物として、LGBTが主役のドラマが増えているのではないかと思うわけです。『俺スカ』が人気原作のドラマ化作品でもなく、一定層のファンがいるBLの世界を描いたものでもなく、アイドルを主役に起用したものでもないことがそれを裏付けています。そして、今期のLGBT主役ドラマの集中は次のステージに向かう可能性もあります。ドラマでもLGBTはキャラクターの個性のひとつ、ストーリーで勝負する作品が増えていく。反響の結果次第でそんなことも予想されます。今後、より多様性のある主役が登場するドラマが続いて欲しいものです。

<作品紹介>
土曜ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』

 

日本テレビ系にて毎週土曜よる10時~放送。
脚本:加藤拓也
出演:古田新太、松下奈緒、白石麻衣(乃木坂46)、永瀬廉(King & Prince)、道枝駿佑(なにわ男子 / 関西ジャニーズJr.)、長尾謙杜(同)ほか

 

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。人生で最も強く影響を受けた作品は、テレビドラマ『未成年』。

メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。