年月が経つのは早いもので、制作会社明後日代表の小泉今日子さんがプロデュースを務める舞台「名人長二」のお芝居をブログでご紹介したのはちょうど2年前。そして新しい時代の幕開けとともに、待望の芝居噺シリーズの弐席目「後家安とその妹」が5月25日から新宿紀伊國屋ホールにて上演されることに。

昨日のミモレでご紹介された毎熊克哉さんのインタビューに続き、私なりにこの舞台の魅力を、今日と明日の二日に渡って、後家安の妹役の芋生悠さんと、明後日代表/プロデューサーの小泉今日子さんとご一緒にお届けできればと思います。

芋生悠さん(左)と小泉今日子さん(右)と一緒に。男でなくても美女に挟まられると嬉しいもの♡
 

舞台中央に初々しさを感じさせつつも、他にない独特な存在感を放つ若い女優さんがひとり。芋生悠さんは、イマドキ女子とも言えず、型にハマった古風な女性という訳でもない・・・どこか掴み所がなく、人と違った時空をひとり漂っているような不思議な魅力を放つ女の子。だからと言って決してフラフラしているということではなく、そこには確固たる信念とぶれない強さを内に秘め、私と同じ(というところにも親しみをより感じてしまう)熊本女の強さと底力を感じさせる頼もしい21才。

_____今回のお藤という役。現代ではなかなか理解得がたい「妾」という役柄とお藤の心情を読み取って演じるのは難しかったのでは?

芋生さん:最初の段階でキャラクタは19〜20歳くらいなんですけど、中身をもっと上の女性を演じてほしいと演出の豊原さんから言われ、(映画など)等身大の女性を演じることが多い私にとってはかなり挑戦でした。舞台は生だからすぐ表情も悟られるし、豊原さんやお兄さん役の毎熊さんから「目が嘘つけないタイプ」だと言われてしまって(笑)。大人っぽくやろうというより、中から滲み出るようなお藤の色気だったり、時頭の切れる女性像を意識して実生活から変えれるように努力しました。

____日に日に、芋生さんの演技に磨きがかかり、その成長ぶりに只々驚かされ、相当悪だな〜っ、て錯覚を起こしそうになりましたが(笑)、お藤との共通点みたいなところを自分の中に見いだすことありますか?

芋生さん:どちらも負けず嫌いだというところは演っているうちに共通点を感じていて、幼い頃は立派な武家の子供ながら、不条理な両親との別れがあって、それでもお兄ちゃんと二人生きていかなければならない。食うや食わずの生活の中、一見すれば悪い兄弟だけど、それも全部生きるための手段。その中で垣間見るお藤の気持ちとして、お兄ちゃんのことが大好きで、二人で幸せになることを夢見ている純粋な想いが根底にあり、その部分には共感を覚えます。悪い女だけど心底憎めないキャラクターに最終的に観客が騙されてほしいな〜って。あれ?なんだかあの兄妹に感動してしまった、みたいな・・・(笑)

お会いした当初は年齢相応の可愛らしさを感じさせる芋生さんでしたが、最近ではグッと大人っぽく、その色香に女優の底力を感じさせてくれます。

_____今回初めての日本舞踊や所作、江戸弁に挑戦されていますが、いかがですか?

芋生さん:お芝居の稽古入る前から花柳流の花柳基先生にみていただき、所作の意味とか、こういう風に見えた方がいい、ということを的確にアドバイスいただけて、「あっ、そういうことなんだ!」と新鮮で刺激的な経験でした。踊りだけでなく、所作を含めて短期間の中で集中して覚えましたが、とても濃厚で充実した時間。以前に空手をやっていたんですが、空手の型にも意味があるように、所作の一つ一つにも意味があるというのが素敵だな〜と、そこはお芝居に通ずる何かを感じています。一応踊りの師匠という役柄なので、ある程度ではダメで、他の人たちより頑張らなければと・・・(笑)

江戸弁やイントネーションも難しかったのですが、映像しかやってきてない私が、舞台で声を出すこと含めて慣れないことばかりで、また、そこに「お藤」とどう対峙してくかみたいなことも重なって、パニックってフリーズばかりしていました(笑)

_____習得しなければならないこと満載で、自分のどこに焦点を置いていいのかわからなくなりますね(笑)

芋生さん:それがまた怒りみたいになって「何くそ〜!負けるものか!」って、その怒りを(芝居上の)殿に思いっきりぶつけていました(笑)

_____映像ではインディーズ映画界では引っ張りだこの芋生さんですが、舞台と映像の違いや、それぞれの醍醐味はどんなところにありますか?

芋生さん:映画は、一つ一つのシーンを作りあげ重ねていく作業で、映像として残っていくものだからこそワンシーンに向かってみんなが集中して、「その架空の瞬間を作る」ところに面白さを感じています。 舞台は同じ話を最初から終わりまで何回もやる作業で、生(ライブ)ならではの空気感だったり、同じことが一つもないのがおもしろいのかな〜と思っていて。その中で毎回とは言わずとも「あっ、こんなもの一生作れないな」というような奇跡の瞬間な起こるところが面白いです。そこには役者さんがいて、スタッフがいて、そして観客がいる、それが一体となって生まれる奇跡ってすごいんだろうな〜って思うんです。

____今回、演出を手掛けている豊原功補さんのご指導はどうですか?

芋生さん:最初から全然うまくやれていなかったんですが、お藤が夢の話をするシーンがあって、少しお藤を掴みかけたとき、功補さんも一緒に掴んで欲しいという気持ちがぶつかり合った時があって、役者と一緒にやってくださるというか、役者同士の会話ができるのが新鮮でした。喧嘩をするわけではなかったのですが、中でぶつかり合う時を感じられるのがすごく楽しいです。

だんだんと本当の兄妹にさえ感じさせてくれるふたり。孤独の中に生きる強さとその兄妹愛に、悪党ながら共感さえ覚えます。
稽古もラストスパート!!!

____熊本の震災があって以来、イベントやボランティアの活動などでもご活躍中ですが、これからやっていきたいことはありますか?

芋生さん:私はあまり型にはまりたくないというのがあって、映画も作ってみたいとも思うし、(熊本はい草の生産地なのですが)お父さんが畳屋さんで、畳が家にある家庭も少なくなってきた今だからこそ、映像に残していきたいと思いもあって・・・それだけでなく純粋にお父さんのことを撮ってみたいな〜という気持ちがあります。

____絵も得意と聞きましたが。

お芝居をやっている最中にいきなり絵を描きたいと思うこともあって、でも心が動かないとなかなか描けなかったり。日本画家の池永康晟さんと親しくさせていただいているのですが、仰っていたのが、一流の画家でさえも全く描けないときがあって、そこに自分の魂が乗っかっていないと描いてるものに気持ち悪さを感じてしまったり、自分で生み出したのはいいけど、嘘の塊に見えたりするような心地悪さを感じてしまう・・・そいういう観点はお芝居でも共通のような気がします。

芋生さんの感受性の豊かさはこれからの女優さんとしての限りない可能性を感じさせくれます。

____最後に皆様にメッセージお願いします。

芋生さん:落語が原作なのですが、登場人物たちがだんだん生きてきてる感じがして、最近一人一人のキャラクターたちがどんどん宿り始めて、本当に怖いくらいなのですが、お客様を目の前にした時にもっと化け物となって乗り移っているような舞台を生み出せたらと思っています(笑)

 

明後日公演2019芝居噺弐席目「後家安とその妹」

【企画・脚本・演出】豊原功補 【原案】三遊亭圓朝「鶴殺疾刃庖刀」 / 古今亭志ん生「後家安とその妹」 【出演】毎熊克哉 芋生 悠 / 森岡 龍 広山詞葉 足立 理 新名基浩 / 福島マリコ 塚原大助 / 古山憲太郎 豊原功補 【公演日程】2019 年 5 月 25 日(土)~6 月 4 日(火) 【劇場】紀伊國屋ホール (〒163-8636東京都新宿区新宿3-17-7紀伊國屋書店新宿本店4F TEL:03-3354-0141) 【チケット】一般:¥7,800 U-22:¥3,000(前売・当日共/指定) 

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