皆様、今年になって初めてのミモレ、ご無沙汰してしまって本当にごめんなさい。大森編集長が6月で退任とお聞きし、私もこの連載を終了することを決心しました。

創刊時、大草 ディレクターにお声がけ頂き、大森編集長に担当してもらってスタートした「インテリアの小さなアイデア」。当時、自宅をリノベーションしてまだ間もなく、私自身、暮らしの中での新しい発見が日々ありました。それをそのままミモレに書くことができたのは、とても貴重なことでした。
皆様から温かいコメントをたくさん頂きました。「インテリアの小さな変化が暮らしを変える」ということを、連載を通してお伝えできたのではないかな、と思っています。

2016年、この連載を本にして頂きました。「インテリアの小さなアイデア109」は、講談社の書籍編集部の相場さんのお力で実現しましたが、実は連載スタート時、大森編集長から「将来、本にすることを考えて連載の体裁を考えましょう」とご提案いただいていたのです。

私の初めての本は、ミモレという場があったからこそ生まれました。
 

【父母の結婚】古い写真を病院に持って行き、父と話をするのが日々のことになった。61年前の父と母。父が28歳、母は24歳。父も母も若く、豊かではなかったけれど、なんと凛々しいことだろう。当時、社会保険事務所に勤める父の月給は8000円だったと、母に聞いたことがある。経済的に恵まれた実家で甘やかされて育ち、ご飯の炊き方も知らなかった母と、祖父の事業の失敗で苦労し、小さい時から釜でご飯を炊くことが役目だった父。環境の違う2人が、同じ職場で出会い、互いに望み、家族にも祝福された結婚だった。何か決意さえ感じる若き日の父と母の写真を、今、病床の父とともに眺める。


この本の最終校正は、母の病院のベッドの傍でしていました。出来上がった本を手にして、ありがとうと何度も言ってくれた母は、翌年の1月、眠っている間に旅立って行きました。

今年になって、父が二度、低血糖に陥り救急車で運ばれました。肺疾患もあり、日常でも酸素吸入が常に必要で、一人暮らしが次第に難しくなっていきました。4月には体調を崩して入院。私は2月からほぼ毎週、札幌に通っています。

そんな中で、今まで以上に、暮らしの中に喜びを見つけることの大切さを感じています。毎週帰るたびに、朝の散歩で目にする道端の花たち。父の病室に持ち込んだ一脚の椅子の力。白い病室の壁に掛けた彩のカレンダー。病院の近くで見つけたカフェでのひと時の重さ……。

この連載でも「インテリアは日々の暮らしのすべてのこと」と捉え、発信してきました。それは間違っていなかったと思います。

私のこの4年間は、モダンリビングの編集長から発行人という立場になり、セミナーや講演、アドバイザーなど新しい仕事が増え、そのかたわら、両親の老いと真正面から向き合う日々でした。
そして、私は人生の中で最も深く家族と関わる時間を得ました。母の病気や父の介護がなければ、両親とのこの関係も生まれなかったと思います。

毎週、父の傍にいて、私はただ父の手を握っている時間が長くなっています。それだけで父は安心したように眠るのです。

そして改めて思うのです。人生において、無駄なこと、意味のないことは一つもないのだと。

おしゃれがそうであるように、インテリアもまた、あなたの人生の一部です。
家族を幸せにする「小さなインテリア」を、いつも心のどこかに留めていてください。人は自分の周りにあるものでつくられるのですから。

またいつか、別の形で皆様とお会いできますように。

下田結花
 

追伸
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