篆刻(てんこく)から書、料理、陶芸、絵画、漆工芸……。名料亭として語り継がれる「星岡茶寮」を舞台に活躍。自然礼賛を貫き、厳しい美意識で総合芸術を完璧に追い求めた巨人、北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん)。グルメ漫画『美味しんぼ』に登場したり、テレビドラマのモデルになったりと、その名は、昭和の「美と食」を語る上でなくてはならない存在です。
2019年は、そんな魯山人の没後60年にあたります。8月25日(日)まで千葉市美術館で開催中の展覧会『没後60年 北大路魯山人 古典復興―現代陶芸をひらく―』では、魯山人の作品約120点を中心に、同時代の陶芸家たちの作品や古陶磁の名品など計202点が一堂に会します。
今回は展覧会の見どころを探るべく、『美と食の天才 魯山人ART BOX』(黒田草臣著)に掲載されている代表作品から、その技法や特徴をご紹介します。
必見の代表作①【色絵魚藻文染付鮑形鉢】
染付と色絵で涼しげな魚藻文が描かれた鉢。もともとは中国・景徳鎮で焼かれた器を収集した魯山人が、その形に倣って作陶したもの。1883(明治16)年、京都・上賀茂に生まれた魯山人の50歳代の作品です。「料理と食器が一致し、調和する」のを心掛けた魯山人が、名器に学び次々と器を作り出していたころのもの。
展覧会では、明代の景徳鎮窯の巻貝形の向付と合わせて展示されています。
必見の代表作②【日月椀】
黒、金、銀の対比が美しく、現代にもそのデザインが広く親しまれている「日月(じつげつ)椀」。漆黒の漆に丸く切った金箔と銀箔を交互に置いて、太陽と月を表しています。薄い木地に和紙を張って漆を重ねる「一閑(いっかん)塗り」の技法で、微妙なしわができてそれぞれの箔の凹凸が温かみを感じさせます。
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