接近中の台風の低気圧の影響でしょうか、なんだか気がふさぐ今日この頃。寒くて暗い2月も毎年気持ちがふさぐのですが、近年は「どうせ仕事する気になれないし!」と海外旅行に行っちゃったりしてだましだまし過ごしています。でもよく考えたら梅雨時も暑い真夏も、忙しい年末年始も同じようなこと言ってた。もしかしたら私はこの国を――所属する組織やコミュニティでは自分を殺して気を使う“いい人”であることを求められ、その反動かなんかしらんけど、見知らぬ人や異物認定された人(外国人やLGBT)には恐ろしく冷たい、時に攻撃的ですらある――捨てちゃいたいのかもしれない。とか思いつつパラパラとめぐる英会話のテキスト。おおおお遅い、おおおお遅すぎる、ほとんど3周回遅れくらいのレベル。自分のダメさに戦慄し、じっと手を見る状態のここ数日です。
『おっさんず〜』の吉田鋼太郎さんを史上最高レベルで称えたい
そんな中で私を慰めてくれたのは、『おっさんずラブ劇場版 LOVE or DEAD』です。いえ、正確に言えば、Yahoo!で書いた『おっさんずラブ劇場版 LOVE or DEAD』のインタビュー『沢村一樹が語る「吉田鋼太郎と林遣都はクレイジーにもほどがある」』原稿のビューが、めちゃめちゃよかったことです。私史上最高レベルの跳ねっぷり。リンクを張ったツイートの「いいね」が4000を超え、つながっていなかった知人が「バズってる!」と@を飛ばしてきたってのも、初めての経験です。ええ、すでにバレバレだとは思いますが、リンクを貼っているってえことは、ミモレ読者を動員してさらにビューを稼ごうという魂胆です、私の心の慰めのために。お客さん、ほんとに面白い原稿ですから、さあ騙されたと思って、ポチっと。
とまあ冗談はさておき。
正直言えば、私はTVドラマ放映時は、それほど熱心な視聴者ではありませんでした。でも同じマスコミ業界にいる人間として、この番組の計り知れないインパクトは感じていたんですね。地上波でLGBTもの(キスシーンなどもちゃんとある!)を成立させて視聴率をとったのは何しろすごいことですが、それ以上に私が素晴らしかったのは、その主体が美少年とかじゃなく、「おっさん」であることです。
LGBTと「おっさん」掛け合わせが表立って語られるとは画期的なこと。特に日本のような、その大部分を「おっさん」世代が支配する男社会、女性さえも男性化しないと受け入れられない「おっさん」主導型ホモソーシャルにおいて、そこに所属する男性の大前提は「自分は同性愛者ではない」と示すことです。男たちは無意識下で「俺は部長を尊敬してますけど、これって恋愛感情じゃないんすよ」という状況を伝えんがために、部長から「デスクの渥美ちゃんのオッパイ、すっげーよな」と言われた時に、「ほんと、たまんないっすね」と答えるハメになる。ここで「そういう話はちょっと」と答えれば、「お前つまんねえな」と仲間に入れてもらえなくなってしまうんですね。
だからこそ「おっさん」で「LGBTもの」を作ったことは、ほんとにすごいこと。特に私は、黒澤武蔵を完全な乙女として演じた吉田鋼太郎さんを、史上最高レベルで称えたい(→部長ファン)。自分の愛しい部下をひそかに「はるたん」(部長考案)と呼び、はるたんとのランチミーティングに彼の好物の唐揚げを作り(作ってるうちに弁当にまでエスカレートして作ってしまい)、自分の気持ちを恥じることなく「好きでぇーす!!」と愛を絶叫告白し、傷ついた自分を周囲に隠さずに泣くことができ、(牧以外の)誰を相手にしてもマウンティングすることない「共感ベース」のトークで、お花とバルーンにあふれた可愛い結婚式を夢見ている――つまり部長は、ホモソを支える「男性性」をすべて放棄した、ものすごい素晴らしいキャラクターなのです。そういう彼が威厳と尊敬を持って受け入れられる、あの世界ももちろん素晴らしい。
そして実は映画版のラストを、テレビ版のラストより買っています。これぞ自立した二人の関係だと。よろしければこちらは劇場でご確認くださいませ。
ああ、『おっさんずラブ』について語ったら、なんとなく元気でてきた。テレビをつければ嫌韓ネタだらけ、テレビも新聞も雑誌も週刊ポストも、仮想敵の存在を煽って、日常生活に不満持ってる人のストレス吸い上げて小銭稼いで。おかげで世の中はササクレまくりのギッスギス。そういう時は、もうテレビは消しちゃう。
あ、そうそう。ちなみに私のyahoo!の過去記事で、この記事と同じくらい跳ねた(1000シェア超えた!)、そして長々とお読み頂いている記事がこちら。差別と搾取と全体主義がすごく嫌いな、私と同じ考えの人は、日本にだってきっとたくさんいる。
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