そう目を細める大森さんは、大人の渋みと色気を漂わせながらも、どこか少年のよう。1971年生まれの赤堀さんがつくる作品に対しては、同年代ならではのシンパシーを感じると言います。

 

「この年になっても生きていく上でそれなりに悩みがあって、自分も殺すこともある。世の中のルールも、正しさも間違いも、時代と共に変わっていっていくけど、年齢を重ねた分だけ自分の思考が硬直化して、うまくそれについていけなかったりして。そういうこの年代特有の違和感や息苦しさを赤堀くんはすごくうまく書いてくれるんです。だから、共感できるんだと思います」

映像が主戦場の大森さんにとっては、生の舞台に立つことそのものが、ひとつの刺激でもあります。

「ライブであることが舞台の面白さ。その日来てくれたお客さんと僕らでつくるものなので、日によって温度とか湿度みたいなものが全然違うんです。毎回、打点高めを目標にやってはいますけど、そうじゃないときも中にはありまして。それを見られるのもまたひとつの醍醐味なんです。お客さんには、そういうライブ感を楽しんでもらえたら。あとはぜひ生の長澤まさみさんを観に来てください(笑)」


子どもにカッコいいと思ってもらえる存在でありたい

 

今年、お子さまが生まれ、パパになった大森さん。最後に、子どもを持ったことによって生まれた変化についても聞いてみました。

「すごく大切で、代えがたいものができたとは感じています。子どもを見ていると思うんです、この子が大人になって悪いことをしたらどうするんだろうと。やっぱりそういうのは親の影響もあるだろうから、ちゃんと責任を持って育てなくてはとも考えますし。そのためにも一人の人間として自分を律する感覚は今までよりずっと強くなった気がします」

俳優という仕事に対しても、今までとはまた少し違った気持ちで取り組んでいるそうです。

「モチベーションが上がったのは確かです。特に僕の場合は、父親(俳優・舞踏家の麿赤児さん)が舞台に立っているのを見て育ちましたし。今、父親は76なんですけど、今でも人生懸けて暗黒舞踏をやり続けているのを見ると、純粋にすごいなと思うのもあって。自分の子どもにも、僕が表に出ている姿を見てもらいたいと考えるようになりました。それまでは全然この先どうありたいかなんて考えたこともなかったんですけど。今は、父親が僕に思わせてくれているのと同じように、子どもにもカッコいいなって思ってもらえる存在でありたいと思っています」

そこでひと区切りをつけて、ちょっと照れ隠しのように、大森さんはこう付け加えます。

「そこまでは頑張らなければいけないなと思うと、やっぱりちゃんと人間ドックには行かなければと(笑)。健康も含めて、ポジティブに人生を解釈していきたいです」

 

惑うことの多い40代に必要なのは、健康と、刺激と、新しいことを楽しむ気持ち。普段なら選ばない色の服を買ってみた。知らない街に行ってみた。観たことのないお芝居にふれてみた。そんなささやかな刺激が、人生をよりいとしいものにしてくれるのかもしれません。

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<公演紹介>
コムレイドプロデュース『神の子』

 

作・演出:赤堀雅秋
出演:大森南朋、長澤まさみ、でんでん、江口のりこ、石橋静河/永岡 佑、川畑和雄、飯田あさと/赤堀雅秋・田中哲司

<東京公演>
2019年12月15日(日)~12月30日(月)@本多劇場

<名古屋公演>
2020年1月7日(火)〜9日(木)@ウインクあいち

<福岡公演>
2020年1月13日(月·祝)@福岡国際会議場 メインホール

<広島公演>
2020年1月16日(木)@JMSアステールプラザ 大ホール

<大阪公演>
2020年1月18日(土)・19日(日)@サンケイホールブリーゼ

<長野公演>
2020年1月23日(木) @サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター) 大ホール

<静岡公演>
2020年1月25日(土)・26日(日) @浜松市浜北文化センター 大ホール

撮影/岩田えり
取材・文/横川良明
 
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