「ブルーアワー」とは、昼と夜が混じりあう夜明けと夕方に訪れる、世界がブルー一色に染まる時間のこと。昼なのか夜なのかどっちつかずで、なんだか心もとなく、妙に不安で寂しいようなその時間ーー映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』は、人生の中のそんな時期にある主人公を描いた作品です。主演は「こんな役を待っていた」と主人公への共感を語る、主人公と同世代の夏帆さん。自身の「ブルーアワー」をどんな風に表現したのでしょうか。

夏帆「昔の自分のイメージとのギャップと、焦燥感や苛立ちを表現できたら」_img0
 

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10代の頃からこの仕事をしている自分だからこそできた役


中途半端に長い昼寝をしてしまって「ブルーアワー」に目覚めると、一瞬、今が何時なのか、一体どこにいるのよくかわからない。そういう経験が誰にでも一度くらいはあるかもしれません。人生にもそういう時間があるーー映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』が描くのは、そんな物語。夏帆さんが演じる主人公・砂田夕佳は30代になったばかりのCMディレクター。仕事ではそれなりの評価を受け頼られてもいるし、理解のある夫と結婚もしているのですが、何かに苛立ち、それが何かわからないことにも苛立っています。

「この映画は時間の話でもあると思うんです。時が過ぎてゆくことって止められないじゃないですか。そういうことへの焦燥感は、自分自身の中にもあって」

と、自身と同世代の砂田を演じた夏帆さん。周囲に不機嫌を隠さず、時に容赦なく相手を攻撃し、酒を飲んでは飲み込まれて、その一方でかっこつけて自分のモヤモヤから目を背ける砂田は、これまで夏帆さんのこれまでのイメージとは全くことなる役柄です。

「演じながら感じたのは、10代の頃からこの仕事をしている自分だからこそできた役だなと。今でも10代の頃のイメージのまま見られることが多いのですが、その頃の自分と今の自分は違う。年を重ねるにつれ、そのギャップのようなものが大きくなってきて。自分が年を重ねていること、変化しつづけていること、今の自分の悩みや感じていることを、お芝居として表現してみたいなと思っていたところだったんです。そういうタイミングでこういう役を頂けたことには、めぐりあわせのようなものを感じましたね」

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シム・ウンギョンちゃんとでなかったら
あの二人の空気感は出せなかった


「撮影日数が12日間というすごい短い期間だったので、始まったと思ったらあっという間に終わってしまって。 最初と終わりは覚えているけれど、その間の記憶があまりないという(笑)。それだけ“駆け抜けた”という感じでした。7月末から8月頭にかけて撮影だったので、なんか夏休みみたいな感じもありましたね」

映画が描くのは、入院中の祖母を見舞う砂田の一泊二日の里帰り。故郷と家族があまり好きではなく、帰郷をなんとなく先伸ばしにしていた砂田をその気にさせたのは、「おもしろいじゃないっすか」と乗っかってきたキヨこと清浦あさ美。砂田の子供時代からの友達です。クルマを「ぶっ飛ばして」、突発的に始まったドライブを描く前半は、まさに疾走感満点。キヨ役のシム・ウンギョンさんとの掛け合いのテンポのよさも抜群です。

「ウンギョンちゃんとの共演はすごく楽しかったですね。掛け合いに関しては、撮影前に本読みをして、実際に撮影する場所でもリハーサルを重ねました。監督は二人の関係性を踏まえた上でスピード感やテンションを計算し、3人で話し合いながらつくっていきましたね。ウンギョンちゃんは実力とセンスを兼ね備え、その上に人柄もすごく素敵で、いつも周囲を笑顔にするユーモアがある人。キヨは砂田がずーっと一緒にいる相手ですし、彼女でなかったらあの二人の空気感は出なかったんじゃないかと思います」

映画のなかのキヨは、演じるシム・ウンギョンさんそのままのキャラクターとして存在します。家族に対しても心を開かず、殺伐とした空気をまとった砂田に対し、何に対しても軽やかに「面白じゃないっすか」とヒョコヒョコと動き回り、場に明るく前向きな空気を振り撒きます。

「砂田にとってのキヨは、誰も知らない自分の拠り所みたいな存在なんです。子供の頃って誰にでもそういう存在があったと思うんですよね。私自身も、このぬいぐるみを持っていると落ち着く、とかあった気がします。そういう存在が必要なのは、自分自身を守るためなんだと思うんですよね」

そしてこのキヨが抱えるある秘密が、砂田のかかえる問題ーー寂しさをさらに浮き彫りにして行きます。
 

 
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