米倉涼子さんが、過去に観た映画を紹介するアーカイブ コレクション。
そのときに観た映画から、米倉さんの生き方、価値観が垣間見えます。
家族に迷惑をかけたくないと、自分のお葬式の準備を進める父親。体によさそうなジュースを作って飲ませようとする娘たち。そんな姿に、プロポリスやお水を探しては父に飲ませていた自分の姿が重なりました。
この父親は前向きに、自分が“エンディングノート”に書いたことをビジネス的に進めているように見えるけれど、ときには泣きたい気持ちをこらえて恐怖と向き合っていたと思うんです。
でも病院のベッドに寝ている父親に長男が「パソコンのなかのメモが見つからない」と言えば、「プリントアウトがある」と答えたりして、最期まですべてにおいて本当に抜かりがないの!
将来のことが分からない私は、保険のことなども親頼み。この映画を観て、私たちの世代だっていつ何があるかわからないのだから、残された人が困らないように準備しておこう、自分にとって理想的な最期のあり方を考えてみようと思うようになりました。
何よりも心を動かされたのは、この家族が父親の病気をきっかけにさらにお互いを愛するようになっていったこと。決して順風満帆ではなかった夫婦が寄り添っていく姿も素晴らしいなと思いました。
このページは、女性誌「FRaU」(2012年)に掲載された
「エンタメPR会社 オフィス・ヨネクラ」を加筆、修正したものです。
『エンディングノート』
“段取り命”の熱血営業マンだった父が、退職後にガンを発症してしまう。自分らしい葬式の準備など死ぬまでにしておきたい“終活”を進める父のプロジェクトに娘がカメラを向けた。ひとりの人間の最期と家族の関係を追いかけながらも、軽やかなユーモアと豊かな後味が残るセルフ・ドキュメンタリー。