対称的な女友達が魅力的に描かれるとヒットする!?

信楽で陶芸家として生きる主人公・喜美子(戸田恵梨香)

喜美子は貧しいがバイタリティあふれる少女、照子は信楽で最も大きな窯元の娘で高慢ちきそうに見えて意外とおせっかいないい人、と対称的に描かれています。

 

キスはともかくとして、朝ドラでは、対称的な女友達が魅力的に描かれるとヒットするといっても過言ではありません。
現在放送中の『おしん』では主人公おしん(田中裕子)の奉公先のお嬢さん・加代(東てる美)が運命的な友情を育んでいます。朝ドラ革命『あまちゃん』では都会に出るアキ(能年玲奈/現・のん)とどうしても地元から離れられないユイ(橋本愛)の差がドラマを盛り上げました。『カーネーション』では糸子(尾野真千子)と奈津(栗山千明)の友情が最後まで描かれました。『花子とアン』の花子(吉高由里子)と蓮子(仲間由紀恵)もまさにアンとダイアナのようでした(もうひとり、醍醐さんというキャラもいるんですが)。『スカーレット』の喜美子と照子も記憶に残る女友達になることを期待します。

少なくとも、教育エンターテイメント番組『みいつけた!』の好奇心旺盛少女スイちゃんだった川島夕空と『義母と娘のブルース』で娘の幼少期を演じて泣かせた横溝菜帆の子役演技はかなりのクオリティーで、キスされた瞬間の川島の驚きとあまり気持ちのよいものではないという感じを表す微妙な表情(口と口が重なるところは映してない)が迫真。
このふたりの関係性を戸田恵梨香と大島優子には超えてほしいです。的確な芝居をする職人のようなふたりだから期待に応えてくれるでしょう。

喜美子の女友達で窯元の娘・照子(大島優子)


と、ここで、もうひとり期待の登場人物が。喜美子と照子と行動をともにする同級生・信作。成長した彼を演じる俳優は『おっさんずラブ』で大ブレイクした林遣都です。滋賀県出身者として地元の期待を西川貴教(のちに登場する芸術家役)とともに担うことになります。キスして絆が強まった喜美子と照子の間で彼がどう振る舞うか気になるところ。子供のときは、体が弱く病気がちで、気も弱く、女子ふたりに振り回されていましたが、成長すると思わぬ変化が見られるそうです。

林遣都は『おっさんずラブ』や『京都人の密かな愉しみBlue』などで見せるクールな面と、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』などで見せたおとぼけな面のギャップが魅力のひとつ。『スカーレット』ではそのハイブリッドが見てみたいなあ、なんて夢想しています。

<作品情報>
連続テレビ小説『スカーレット』

◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~    
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき 

 

ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。
エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

構成/榎本明日香、片岡千晶(編集部)

 

前回記事「第1部完結。宮藤官九郎が描いた「馬鹿」に学ぶこと【いだてん 24回】」はこちら>>

著者一覧
 

映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。最新刊は渋谷、浅草、豊洲など東京のいろんな街を舞台にした連作小説『インナー・シティ・ブルース』(スペースシャワー・ブックス)。ほかに『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』、『文化系のためのヒップホップ入門12』(大和田俊之氏との共著)など。

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1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

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1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

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1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。

ライター 木俣 冬
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