日本政府は男性育休の取得率を上げるため、まずは国家公務員に1か月の取得を促す方針だと報じられています。

 

私が住んでいるシンガポールでも、男性の育休取得は課題になっています。シンガポールでは2017年から有給で2週間の男性育休(費用は政府負担で、自営業も対象)を促していますが、2018年は該当者の35%しか取得していなかったと現地紙Straight Timesが報じています(2019年8月6日)。

日本に比べれば取得率は格段に高いですが、80~90%の国と比べ、また制度導入直後の取得率と比べても下がっていることから、シンガポール政府は課題と認識しています。

シンガポールで男性育休取得が低迷している理由の1つは、キャリアへの影響が懸念される点です。同紙でも専門家が“Some may not want to be absent too often in order to show they are committed and dedicated workers”と言っているように、日本と同じく、要は男性が「育休を取るとやる気がないと思われる」ことを心配して取りにくいというわけです。

そもそもシンガポールでは、女性も産後3か月程度(現在、政府が定める産休は16週間)で復帰し、政府が育休の延長政策を打っても「あまり長く休むとそれを理由に解雇されるかもしれない」と反対する女性もいます(Sun2009)。安心して育休を取れるよう、ここは日本もシンガポールも変わっていく必要のある点でしょう。

もう1つ、シンガポールの場合は、両親が育休を長く取らなくても育児ができる方法や選択肢が豊富だということも、男性育休取得の必要性を引き下げている理由かもしれません。保育園は地域によってすぐには入れないこともあるようですが、国自体が小さい都市国家なので、両親がすぐ手伝いに行ける距離に住んでいることが多く、さらに住み込みの外国人家事労働者(メイド)や産褥期専門のナニーを雇って新生児の面倒を見てもらう家庭もあります。

では、こちらの選択肢、つまり「家事労働者などの育児資源を豊富にすれば、男性育休を促さなくてもいい」という方向性は、日本が向かうべき選択肢になり得るでしょうか。結論から言えば、育児の社会化はもっと進むべきで、ひとり親などが育児支援を得られる体制は必要だとは思いますが、かといって家事労働者の増加がすべての問題を解決するわけではありません。

 
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