実は日本の職場では、こうした目的と手段の取り違えが多数発生しており、これが企業の生産性を著しく引き下げています。

会社を見渡すと、なぜ存在するのか分からない部署や手続きがあり、そこには多くの人員が割かれていますが、誰もそれを改善しようとしません。

日本から「職場のムダ」がなくならない理由_img0
 

ITの導入でも同じようなケースが散見されます。業務を合理化する目的でITを導入しているのに、従来の仕事の進め方をそのままシステムに実装してしまい、挙げ句の果てには、ハンコの画像をそのままシステムで再現するため、多額のコストをかけたケースまでありました。

 

ではなぜ、こうしたムダがなくならないのでしょうか。

消極的ではありますが、実はわたしたち全員がこうしたムダなやり方を望んでいるからです。職場でごく一部の人だけが暴力的にムダなやり方を周囲に強要し、皆が嫌々、そのやり方に従っているのであれば、問題の解決は簡単です。問題を起こしている張本人にそうした行為をやめてもらえばよいからです。

しかし、私たち全員が、常に何らかの部分で、目的と手段の取り違えを日常的に行っているのだとしたらどうでしょうか。全員一致で「これはおかしい」と指摘できるような事でも発生しないかぎり、社内には、こうしたムダが蔓延することになります。当の本人は真剣にそれに取り組んでいますから、周囲が指摘すると逆に怒り出すケースもあるかもしれません。

日本人は「和」が何よりも大事ですから、あえて他人と衝突しても合理化しようという人は少数派です。結果としてムダが半永久的に放置され、会社の生産性を著しく下げてしまうのです。

今回のインターンの件はたまたま大きな話題になっただけで、実際にこの業務を外注している社員は、ムダに気付いていなかったかもしれませんし、私たち自身がその担当者だった場合でも、ムダだからやめるという決断をできた保証はありません。

仕事というのは、一歩間違うと、取り違えやムダを招くものであり、こうした事態に陥らないようにするためには、自分自身の常識について常に疑ってかかる姿勢が重要でしょう。もし、会社の後輩や部下が発した疑問に対して「仕事というのはそういうものだよ」などと説明していたら、少々、注意が必要かもしれません。

前回記事「日本は『ONE TEAM』になれるのか?」はこちら>>

 
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