この原稿を書き公開を待つ2日間の間に、電光石火で中止となった首相と「桜を見る会」。景気が悪くて「失われた」とか表現されることも多いここ20年、特に2013年の安倍首相就任以降は、「アベノミクスで景気がいいから」か、招待客数が増加の一途をたどっていた「桜を見る会」。そのせいか2013年以降、毎年計上された予算をオーバーし、今年に至って予定の3倍超の経費を使って、国会で「予算とかけ離れている」と追及されていた「桜を見る会」。そういうわけで「消費税増税で税収も増えたし、だったら最初から計上しとくか!」ってことなのか、来年は今年つかった金額に200万上乗せした5700万円を予算計上した「桜を見る会」。ええ、もちろんすべて税金です。

「桜を見る会」周辺で見えてくる、うさん臭くてグダグダな日本の社会_img0
 

税金が使われるんだから、どんな人が招待され、お楽しみになるのか公表されてしかるべきです、当然。今年の開催要項によれば、招待対象となった人は、皇族や各国大使、衆参両院議長、国務大臣、国会議員、都道府県知事らのほか「その他各界の代表者等」だそうで、共産党の田村智子議員の参議院予算委員会での追及には「各界において功績、功労のあった方々」とのお答え。

 

ネット上に無数に上がった会の写真やブログを見ると、ええと、なんだか「芸能人感謝祭」みたいな様相で、首相もももクロと決めポーズなんかしちゃってご機嫌です。IKKOさんにデヴィ夫人に梅宮アンナに神田うの、今いくよ・くるよ、ザ・ぼんち、トレンディエンジェル、ケンドーコバヤシ、バイきんぐ小峠などなどの吉本興業の面々、マスコミで話題のNO.1キャバクラ嬢に、ヘイト垂れ流してるあの有名作家やあの有名外国人タレントにーーそうねそうね、確かに各界の代表者的な感じだし、やっぱり首相が慰労すべき功績とか功労があるんでしょう。

もちろん一般の人もいるようですよ。特に政権与党の偉い人たちの後援会の人たちとか、三原じゅん子さんは親族なんかも呼んでいたり。首相と桜を見る会ですから、おひざもと、山口県からはバス17台連ねてごっそりと招待されているようです。日々私を支えてくれている功労を、慰労しちゃおうってことかな? それって、なんだか接待みたいな……政治家が支援者を接待したら違法だと思うんですが。ああ、そっかそっか、違法じゃないんだ。自分のお金じゃなくて、税金だから! てか、それもっと悪いんでは? 国や税金の私物化って、独裁国家みたいな?

「悪いと認めなければ責任はうやむやになると思っているオッサンって、どんな会社にもいるんだよな……」なんてことを思いながら、参院予算委員会の動画を見たわけですが、「桜を見る会」の予算を追及する田村智子議員に「わかるよ田村さん、なんなら今すぐ飲みに行こう!!」と言いたくなるようなシロモノで、前時代的な会社の、ナメくさったオッサンの悪口を言いながら見たら盛り上がること請け合いですーーが、まあそれはさておき。
 


記念品はメルカリに大量出品


それ以外にも、この会を巡る様々なことが、なんというか、まともな、ちゃんとした社会で起きていることとは思えません。

まずかるーく眩暈を覚えたのは、イベント周りで配られたものがメルカリで出品されていること。スタンダードは桝酒の桝、ただ「桜を見る会」と焼き印された桝で、2~3年後には「あらあらこれ程よい大きさだよね」とか言われながら、ホコリまみれでオフィスのクリップ入れに……といった運命たどりそうなヤツです。来場者に配られる昔ながらの(たぶん安全ピン付きの)リボンとか、粗品のお菓子が入ってた空き箱とか、「そんなのマジでほしいんか!」と思うようなものまで売られて(そして売れて)いますが、一番度肝抜かれたのは「2019年の『桜を見る会』でご本人から直接もらった」という片山さつき政調会長の名刺、13500円。電話番号もメアドもネット上で見えちゃってますが、議員会館のやつだし、ま、別に構わないってことでしょうか。

さらにいえば、実は招待状それ自体も売りに出ているらしいというのが、東スポの「安倍首相の桜を見る会に「裏口疑惑」蔓延する招待状の“高額転売”」という記事。東スポなんで話半分という気もしますが、秘書に上納金を入れさせていた大臣とか、外国人在留資格の口利き料を取っていた政務官とかがボロボロ出てくる昨今の政治の世界で、自分に割り当ててもらった招待枠を「パーティー券」さながらに売って小遣い稼ぐ政治家がいても全然驚きません。その昔、腐敗政治の温床だった政党の資金集めパーティーがこの「パーティー券」方式でしたが、「桜を見る会」は税金で開かれてるんだからより質が悪い。安倍首相の事務所はこれを利用して「桜を見る会」のツアーを7万円でやってたようですが、そもそも「桜を見る会」は無料だし、会場には招待を喜んでノーギャラで来ている芸能人たちもわんさといる。このツアーは、いうたらお安くあがる大接待では?

この追及を受けて初めて「やばい」と思った政党関係者たちが、次々と自分のブログを削除しているのも無様すぎる。国が開いている「桜を見る会」が後援会の定例宴会化し、そこにバスを17台も連ねていくことに何の違和感も感じず、それをブログやSNSにアップすることの無邪気さと言うか、考えの至らなさ。「自分はそういうイベントに招待されている人物です」とアピールしてキャッキャ騒いでる、行動の軽薄さと無責任さ。これは政治が「政治」ではなく、自分たちを楽しませ、儲けさせてくれること優先の「客商売」「人気商売」と化している証拠のようにも思えます。

さらに言えば、この会を問題視して徹底的に掘り返し、先鞭切って鋭く追及するのが、共産党とその機関紙「赤旗」だっていうのも情けなさすぎます。もしかして大手マスコミもトップに近い人を含めて、多くの人が「桜を見る会」に参加しており、追及し始めると「お前だって出てるじゃん」と言われかねないからでしょうか。文句を言われないために共犯にして楽しませ、美味しい思いをさせておくーーそういう回路の中に組み込まれていたら、追及なんてできるはずがありません。もはや日本全体がグダグダで意味不明。

ちなみに「桜を見る会」に5500万円を使った2018年、性暴力被害者の相談と支援を行うために各地に設置された「ワンストップセンター」の運営費は8000万円削減。今年のあいちトリエンナーレで取り消された「文化資源活用推進」に対する補助金3年に1度で7800万円。「性暴力被害者の支援」と「文化資源活用」よりも、「桜を見る会」のほうが重要ってことでしょうか。アホな民衆には食い物と娯楽を与えておけばいいーー腐敗したローマ帝国が滅亡する時の「パンとサーカス」状態に、今の日本もなっているんじゃないか。「はいはい、止めりゃいいんでしょ」ってことで一件落着では、決してありません。
 

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