先週、世の女性たちをザワつかせた「生理ちゃんバッジ」問題。女性がこのバッジをつけることで言葉に出さずに、周囲に(っていうか世の中に)「今日は生理なんでよろしく」と宣言することで、さまざまな不都合が起こりがちなその期間の周囲への配慮、さらに周囲からの配慮を促すというものです。これさえあれば私がその日不機嫌だったとしても、同僚は「仕方ないね、生理なんだから」と理解してくれるし、上司は「今日は渥美さんが生理だって聞いたから、お土産に甘いもの買ってきたよ」とか、お客さんも「レジ係の渥美さん、生理バッジつけてたからおつり間違っちゃったんだな」と思ってくれるーーワケあるかーい!

 

この「生理ちゃんバッジ」、おそらくは大丸梅田店にできた女性フロアの話題作りだったりもするのでしょうが、女性用のセルフプレジャー商品も扱う同店にすれば、このバッジによってこれまでほとんどなされることがなかった「生理」についての議論が沸騰することは想定内に違いなく、それこそが目的だったのかなーとすら思います。
 

 

生理休暇の取得率はわずか0.9%


そんなわけで私はそこに乗っかる感じで、生理周りのことをあれこれ調べてみたわけですが、最初に思ったのは「生理休暇」への違和感です。

「生理休暇」とは法律上で、「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と定められているもの。私自身はぶっちゃけ「今、自分、生理」ってことを忘れちゃうくらい軽いので、生理休暇を取ったことはありません、てかむしろ生理前の、いわゆるPMSの方がキツいんで、そっちで頼むよと思いますが、それって法律的には生理休暇にハマらないのかも……と思ったり。

まあ医者の診断書が必要なわけではないので、究極的には「生理キツいんで」と言って休んでしまえばいいのでしょうが、生理休暇のそういうふんわりとしたところが「あいつはズル休みをしている」みたいにとられちゃうところだったりもする。もちろん私の友人には「生理2日目には寝込む」という人もいるので、そうやって十把一絡げにするのもよくはないとは思うのですが……それ「体調悪いんで休みます」で、いいんでは。

この騒動をめぐって「“生理バッジ”をつけさせるくらいなら、生理休暇をちゃんととれるようにしてくれよ」というツイートも結構あったのですが、私のように結構平気で生理のことを話し&書く人間でも、例えば以前勤めていた会社の上司に「生理キツいんで、今日休みます」と連絡するのは、正直なかなかの勇気がいります。

変な話、「生理ちゃんバッジ」をつけて売り場に立ち、そこですれ違った人に「この人、今日は生理なんだ」と思われることよりも、昭和丸出しの50代の上司に「渥美は今日は生理なのか……」と思われる方が、「毎月このころに機嫌悪いのは生理だからか……」とか「露出度が高い服はもしや生理で発情しているからか……」とか口に出さずにじっとり思われるほうが――いやいや。私の昔の上司はむしろ無邪気に「なんだ渥美にも生理があるのか!がははは」というタイプでしたが、いやまあどっちにしろ、そんなふうな展開を想像すると、そっちのほうがよっぽどハードル高い。

よしんば会社側が「生理休暇は無条件でOK!」という体制になり、人事部かなんかに「生理休暇特命課長」みたいな専任の女性をおいて、生理日かな~?という頃に「大丈夫?そろそろ生理じゃない?休暇取らずに大丈夫?とる時は私に連絡してくれればいいからね」なんて聞いてくれたとしましょう。でも生理休暇は前もってとるものではないわけで、あれ今日は渥美がいないな……現場の上司が思っているところに、特命課長から「今日は彼女は休みです」と連絡がゆき、上司は「渥美は今日は生理」ループが始まり、さらに言えば「渥美は最近、生理休暇を取らないな、もしかして……上がっちゃったのか!最近の不機嫌は生理じゃなくて更年期か!」みたいな、勘弁してくんなまし的に個人情報が漏れてゆくという事態もありありです。

まあそんなこんなで悩み多き生理休暇ですが、「やめちゃえば」と思うダメ押しの数字がこちら。二年前の数字ですが、規模30人以上の企業での生理休暇の取得率0.9%

さらにこの議論がいまいち発展的でないのは、そこに男性が入っていないこと(入ってこないこと)です。女性の問題は、例えば妊娠出産、育児休暇、差別的待遇など、あらゆることの根源が基盤としての男性社会にあるわけで、女性だけでは絶対に解決できない。女性が生理の話をオープンにしない、自分が生理であることを言いづらいのは、男性が生理に対する正確な教育がなされておらず、それゆえに生理の不快感や苦痛を軽く見積もり、セックスと関連づけた何かイヤらしいものであるかのような偏見と好奇の目で見ているからです。もうほんとビビりますが、男性は、私たちが思う以上に、本当にまったくもって生理についてしりません


でもそれを「そういう教育をしない社会が悪い」と言いながら、女性が「男性が自分から学んで気遣うべきだ」と言ってしまえば、何も変わらない(てか絶対に自分からなんて学んではくれない)。なんも「社会のために!」と、道端でそのへんの男性をひっ捕まえて「あんな女は毎月な、200~400mlの血流してるんやで。健康診断の採血管の100~200本分やで」とねじ込む必要はありません。でも例えば、恋人や配偶者と言ったパートナーに生理のリアルを、ちょっと話してみるhttps://laundrybox.jp/magazine/showed-to-husbandこのリンク先の記事はちょっと過激ですが……)ってのはどうでしょう。自分の周囲の男性に理解してもらえたら、少なくとも自分の快適さは担保できるし、みんながやれば社会もちいとは変わるかも。

さてさて話を生理休暇に戻せば、つまるところ生理休暇は「生理」休暇であるがゆえに、生理を特殊なものに見せてしまっている気がします。「体調悪いから休む」「どした?大丈夫?」「大丈夫、病気ってわけじゃなく、生理がキツいんだよね」「そうなんだ。女性は大変だよね。お大事に」くらいのオープンさで、さらりと生理について会話ができるのが理想と、私は思うのですがいかがでしょ。

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