ここ数日の朝夕の寒暖差で、久しぶりに大風邪をひいてしまい、3日間寝込んでしまった。

薬も飲めないものだから、トイレと食事以外は、ただひたすら寝続け、家事一切、手につかなかったわけだが、1番不憫に感じたのは、家に飾った花々がしなしなと萎れていくことだった。

独身時代、仕事に忙殺されていた頃、撮影用に買ったオリーブの植木をベランダに放置して、枯らしてしまったことがあった。私なりに気ままなお手入れはしていたつもりだったが、自分以外の生き物を生かす心の余裕など全くなかったのだ、と感じる。この出来事をある人に話したときに、「それは”茶色い手”だな!」と冗談めかして言われたのが、心にグサリっと刺さって、それ以降、しばらく家で植物を育てることは控えるようになった。

日に日に元気を失くす花々を横目に、ベランダで枯らしたオリーブの木がフラッシュバックしては、「こんなでは、産まれてくる子供も育てられない!」と自己嫌悪の恐怖に苛まれて、悲しくなった。



少し元気を取り戻したとき、家中の花を集めて、一斉に水切りをした。あるものはダメになってしまったけれど、あるものは、たらいの中でみるみると息を吹き返した。こまめに手をかけなければ生きていけないほど、皆ヤワではないのかも、とちょっと安心した。

「子供は、学びにこの世にやってくるのよ」ある友人に教えていただいた。そうか、あれもこれもと過保護にしたり、親の良かれを押し付けるよりも、少し観察するくらいがちょうど良いのかも、と思えたら、少し気楽になった。

 

◎今日の花器・・・小前洋子さんの花器”Tamotsu”。

ちょっと趣味じゃない花束をいただいたけれど、Tamotsuに生けたら「いやいや~、カーニヴァルみたいで、お恥ずかしい・・・」とはにかんでいるように見えて、それはそれでいい。少し枯れかけた頃も「情けないっス。」と照れているようで、それもいい。

 写真:白石和弘