私が妊娠できた、大きな理由のひとつは、“着床の窓のずれ”を見つけられたことだと思っている。

 

次こそは!と期待に胸膨らませ体外受精の移植を試みては、ガックリを繰り返す、不毛な時間にそろそろ疲れていた頃、“着床の窓”という存在を知った。

「ERA検査の結果、半日の着床の窓のずれが分かりました」
小さい頃から、人見知り気味だった私は、初めて人と会う場が苦手。初めての仕事も苦手。知らない電話番号から電話がかかってくれば、とりあえず出ない。
初めてのものには、窓をピタリと締めて、とりあえず拒絶して、後からこっそり覗き見る性格が、子宮にまで及んでいるのかと、妙に納得してしまった。

せっかくやってきた奇跡的な受精卵が、なんの引っかかりもない、ラピュタみたいなツルツルの壁を滑り落ちて行く様子を想像して、気の毒に感じた。

こうやって、窓を閉めている間に、沢山の良い出会いや良い機会を、私は過ぎ越してきたのだろうか。

幸い、検査で見つかった“着床の窓のずれ”に合わせて、移植を試みることができ、そして、妊娠までこぎつけることができた。

しかし、人や仕事は、そうそうこちらの都合を慮ってくれることはないから、自ら意識的に“窓”を開いていくしかない。


不妊治療から学んだ、生きる術。

 

◎今年のシュトーレン
ひょんなことでお手伝いをした、パン屋さん“Fermentation”のイベント。後日、「今年もシュトーレンを焼きます」と聞いて、珍しく並んで買ってみた。
幼少期を過ごしたドイツでは、今時期からクリスマスまで、チビチビと、シュトーレンをいただく。お酒の利いたドライフルーツやマジパンがぎっしりと詰まっていて、大人っぽい食べ物だ、と小さい頃は思っていたけれど、大人になって、その美味しさを感じられるようになって、やっとシュトーレンが好きになった。
毎年、どこかしらのシュトーレンを買っているけれど、今年は初めて、Fermentationのものに挑戦してみる。美味しいパンを焼く彼女だから、美味しくないわけがない。

「call」にて店頭販売・・・12/1(日)〜・12/15(日)〜
「elava」にて店頭販売・・・12/1(日)〜
 

 写真:白石和弘

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