子どもは言葉そのものよりも
発する人の態度を見ている


小島さんが性について理解するうえで最も影響を受けたのは、中学・高校時代の生物の授業。10代の多感な時期は、むしろ性的なことへの嫌悪感が強い場合もありそうですが、授業内容を素直に受け入れられたのには、どんな理由があったのでしょうか?

「いちばん大きかったのは、先生の態度ですね。男の先生でも、その話しぶりから人体へのリスペクトと命への感動が伝わってきたので、抵抗なく頭に入ってきました。性や生殖、あるいは精子や卵子、性器、それらをどんな態度で語るかということは、非常に重要です。モジモジしながら『まぁ…あの…、男の人のアソコね(コソッ)』なんて話していたら、そのものズバリの単語を発していなくてもいやらしく聞こえてしまうでしょ(笑)。“態度”って案外、饒舌なんですよ。」

小島さん自身、息子さんたちとの1問1答のなかで、特にその“態度”に気をつけていた話題があると言います。

「小学校低〜中学年くらいになると、性にはコミュニケーションという側面があるということを話す段階に入ります。最初に説明するのは、『身体の一部を相手に入れたり、自分のなかに受け入れたりすることは、心から信用している人にすることで、とても大事なこと。おもしろがってからかったり、相手が嫌だというのに無理にしたら絶対にいけないよ』ということですが、そうすると子どもは次に『パパとママはするの?』と聞いてくるんですね。でも、そこでひるんではいけません。『ボクたちも、パパとママがしたからできたの?』と聞かれたら、『そうね、パパはママのなかに入ってきて自分の設計図を出して、それとママの設計図をくっつけたからあなたができたんだよ。その通りです!』と命へのリスペクトを込めて話してあげてください。さらに『いまでもしてるの?』と聞いてくるかもしれませんが、そこでも動揺は禁物。『それは言いたくないな。』『キミに悪気はなかったと思うけど、それは本当に大事なことだから、人には聞かない方がいいね。パパとママも自分たちだけで大切にしておきたいから、キミにも内緒にしておくね。』と、目を見てはっきりと伝えましょう。」

幼稚園や小学校低学年くらいであれば「なんで、なんで〜?」としつこく聞いてきそうな気もしますが、小島さんの息子さんたちがそれ以上聞いてくることはなかったそう。

「毅然とした態度に、真剣さが伝わったからかもしれません。子どもなりに“ママが大事そうにしているから、もう聞いちゃいけない”と察したんじゃないでしょうか。彼らに知って欲しかったのは、まず、どんなに親しい間柄でも踏み込んではいけない領域があるということ。そして、性というものはそれくらい大切で特別なコミュニケーションだということ。」

小島さんは、「そしてもうひとつ感じ取って欲しかった、重要なことがあるんです」と続けます。

「それは、彼ら自身もまた“プライバシーを守る権利がある”ということです。現在、息子たちは思春期に入りましたが、私から『彼女できた?』などと聞くことはありません。でも、仮に聞いたとしても、彼らは自分たちの判断で『いまは話したくない』と言っていいんですね。大事なことは性的な内容であっても素直に耳を傾けて欲しいけど、プライバシーについては、はっきり『NO』と言って構わない。それを彼らに理解していってもらうためにも、まずは親の方から意思表示することが大切なんだと思います。」


お風呂での何気ない会話に始まり、命へのリスペクトや人権教育にまで広がっていった小島家の性教育。単に性行為や生殖の話にとどまらない、広い視野をもった性教育は、まさにいまの時代に求められているものと言えそうです。


インタビュー後編では、息子さんたちが思春期を迎え、さらに性の社会的側面にフォーカスした性教育のお話をお届けします。どうぞお楽しみに!

撮影/目黒智子 ヘア&メイク/中台朱美 取材・文/村上治子 構成/川良咲子
(この記事は2019年1月7日に掲載されたものです)
 
  • 1
  • 2