前回「必要以上に怖がると、誤った判断をしがち」と書いたのですが、それは今回も変わりありません。マスクやアルコールを買い占めに走ったり(絶対的じゃないし、医療現場でなくなることのほうがヤバい)、感染源は中国人だからと差別的な言動に走ったり(言ってるうちに世界的には日本人も感染源)、タクシーがヤバい、屋形船がヤバいと極端な風評に踊らされたり(満員電車も居酒屋も同じようにヤバい)、どさくさ紛れの詐欺まがいにひっかかったり……本当どうか、冷静に。

 

と、こういうふうに冷静であろうとしている中で、まったく忌々しいと思うのは、日本の「オフィシャル」がいつもながら「おとぎ話的」なことです。「王様の耳はロバの耳」ってありますね、あれあれ。「国会答弁してる王様の耳ってロバっぽいけど、あれだけ堂々と“アンダーコントロール”って言ってるんだから、おかしいって思う私がおかしいのかもしんないよね」みたいな。確か原発事故の後もアンダーコントロールだったし、好景気(ゼロ金利だけど)とか、女性活躍(ジェンダーギャップ121位だけど)も、そういうアンダーコントロール的世界でめでたしめでたし、幸せに暮らしましたとさってことで、あんまり実感ないのは私がアンダーな世界にいるからなのかもねー。みたいなことでしょうか。

 

先週、私が目にした極めつけの「ロバ耳ニュース」は、新型肺炎、政府が緊急対策に153億円 企業支援も拡充です。総額約153億円のうち103億円を2019年度予算の予備費でまかなうとあり、さも巨額投入した風だけど、ってことは、それまで50億円だったってことですね。ええと、トランプ米大統領に買えと言われて2023年に導入予定の地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」にかかる費用は2350億円ですね。もし私が日本の敵国だったら、そんなのと戦わないなー。だって密かにウイルス持ち込むほうが安上がり。ええと、15日には、人口的には日本の10分の1以下の香港が、新型肺炎対策に3500億円 マスク増産など支援してますね。

さてその翌日16日には、新型ウイルス 感染拡大防止へ先手の対応を 首相が指示という強烈な「ロバ耳ニュース」が。見えます、見えます、ボッコボコに殴られてるのに「今日はこのくらいにしといたるわ」と捨てゼリフする、よしもと新喜劇の池乃めだかの姿が。いまや日本だけでなく、全世界に「日本って後手後手だよな」ってバレてる中で、「先手」って言っちゃえば「先手」を打ったふうになるーーと思ってるのかな。そろそろ感染拡大した地方自治体の首長が連合して怒りの一揆とか起こしていいレベルになっていますね。上がこういういい加減な人であってなお、その言いつけをつい守ろうとしちゃうのが、日本人の不思議なところ。

この機会に私が提案したいことは、みんなが同じ時間に通勤する画一的な勤務スタイルをやめることです。Yahoo!みたいに時差勤務にすればいんだし、そもそもこれだけインターネットが発展した時代に、同じ飛行機に乗ってるだけで濃厚接触って時に、そうはいっても……とみんな同じ時間、同じ場所に集まることの不要不急さに、なんで古来の会社は気づかないのか不思議です。もしかして滅びの美学、的な?「顔を合わせることでしか伝わらないものがあるんだよ!」みたいな美しいっぽく聞こえる情緒とともに、ロマンチックに滅びたいんでしょうか。

ちなみに顔を合わせないと伝わらないという理屈は、自身の言語化能力の欠如を相手に察してもらうことで補おうとするーーそれも日本人好みの情緒(あ、これもおとぎ話風)を絡めることで、相手が否定しにくいーー甘えに満ちた言い訳でしかありません。でもでも確かに、リアル会議室に充満する「部長に花を持たせないと」みたいな空気は、ネット会議では伝わりにくいかも!あ、もしかしてそこがいちばん大事なところだったり?

会社勤めの皆さん、この機会に上司に「満員電車に乗りたくないので、通勤時間を考えてほしい」と各々提案するのはどうでしょうか。まだ導入されていない時差通勤や自宅勤務のテストケースにできるかもしれません。「食わず嫌い」だったネット会議も、この際にやってみたら「意外と大丈夫だね」という成功体験になり、会社の「働き方改革」につながるかもしれません。

そもそもたとえ社長が急死しても、回っていくのが組織のいいところ。誰かが「1週間いなくても、全然回るじゃん」を、個人への蔑みでなく、組織としての発展だと、個人の思考を切り替える。そうした感覚の先に、産休や育休、その後の職場復帰などの一般化が、必ずやあるに違いありません。

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