亮平さんといると、本当の父親と話しているような感覚になる
竹内涼真さんと鈴木亮平さん、実年齢は10歳差。父子と呼ぶには近すぎますが、心と文吾として並ぶ姿は、本当の父子にも、心腹の友にも見えます。演じる竹内さんと鈴木さんはどんな関係性を築いているのでしょうか。
「考えていることや思っていることは似ている部分も結構あるんですけど、亮平さんは俯瞰して見ているんです。だから一緒にいると、本当の父親とふたりでお酒を飲んだりしているときの感覚を思い出すというか。よく父も僕が話したことに対して『わかるよ。わかるけどこうじゃないの?』って別の見方を提示してくれて。そのたびに心のどこかで思っていたことを言い当てられたような気持ちになるんです。亮平さんと話をするときもそういう感覚で。その関係が、文吾さんと心を演じる上で活きている気がします」
ドラマは佳境へと入りますが、事件の黒幕は誰なのかという核心部分はもちろん、心の成長も大きな見どころになりそうです。
「1話と6話を見比べても、心はすごく強くなっていると思います。まだ何も解決はできていないけれど、あれだけ壮絶で濃密な経験をして、どんどん精神的な面で成長していってる。その証拠に、事件の謎を解く理由が、最初は父の冤罪を晴らすため、家族の幸せを取り戻すためだけだったのが、いつしかこんな事件を絶対に起こしちゃいけないという使命感に変わりつつある。ずっと逃げ続けてきた心が逃げなくなったし、一度も諦めなくなった。文吾さんと出会ったことで、村の平和を守り続けてきた文吾さんの正義感が、心の中にも目覚めはじめたんじゃないかなって」
運命に翻弄されながらも抗う心。演じる竹内さんは、運命というものに対してどんな考えを持っているのでしょうか。
「僕は運命とかあんまり考えたことないかもしれないです。客観的に振り返れば、あれは運命だったのかなと思うことはありますけど、その瞬間に生きている自分自身は全部自分の意志で動いているつもり。運命に従ってというよりは、どの道を選ぶかは自分で決めたいほうです」
家族とは、「結局そこだよね」と感じさせてくれる存在
ミステリーとしてのスリル感もさることながら、ホームドラマらしい家族愛も光る『テセウスの船』。暗く沈んだ家族を、赤いマフラーを首からさげた文吾がアントニオ猪木のモノマネで笑わせる場面など、家族の温かさに視聴者の胸もじんわり熱くなります。
「さすがに文吾さんのアントニオ猪木ほどクオリティは高くないですけど(笑)、僕も小さい頃はよく父親やおじさんとじゃれ合ったりした思い出はあります。今でも父とはよく話しますよ。仕事の相談もするし、趣味の話もするし。小さい頃よりも、むしろ20歳を超えてからの方が父と一緒に話す時間は増えた気がします」
そう目元を綻ばせます。家族との仲の良さを感じさせるエピソードはほかにも。
「高校生のとき、よくサッカーの練習が終わったあと試合がない日に、祖母たちと一緒に新宿でお茶をしたりしてましたね。自分にとってはそれが普通っていう感じで。よく休みの日に親戚の子と遊ぶと疲れちゃったって話を聞きますけど、むしろ自分は逆。そんなふうにわちゃわちゃしたところに自ら行くことで気持ちがリセットされるんです」
竹内さんがこんなにまっすぐ伸びやかな心を持っているのも、周りの人たちの愛情を一身に浴びてきたからかもしれません。そんな家族想いの竹内さんに聞く、「自分にとって家族とはどんな存在か」。その答えも、竹内さんらしいものでした。
「結局っていう言い方が合っているかわからないですけど、『結局ここだよね』と感じさせてくれるのが家族。たとえば、誰かとご飯に行きたいなって思ったとき、同じ仕事の人だとどうしても忙しかったら申し訳ないしなって遠慮してしまうことがあって、結局家族に落ち着くんですよね。一緒にいて全然気を使わないし、リラックスできる。いちばん素の自分でいられる場所が、僕にとっては家族なんです」
家族を守るために、見えない真犯人と戦い続ける心。その熱演の裏側には、心と同じように家族を愛する竹内さんの等身大の姿がありました。
『テセウスの船』この後の展開は? 原作で追っかけ&先取り!>>
<作品情報>
『日曜劇場 テセウスの船』
ある雪深い村の小学校で発生した無差別毒殺事件。容疑者として警察官の佐野文吾(鈴木亮平)が逮捕され、その息子の田村心(竹内涼真)は、加害者家族としてつらい人生を歩んできた。それから31年後、死刑判決後も無罪を主張し続ける父親の冤罪を証明するため、心は独自に調査を始める。しかし事件現場で突如発生した濃霧に包まれ、気付くと事件当時の1989年にタイムスリップしていた……。東元俊哉の同名漫画を実写化。原作と真犯人が異なる事を公式イベントで告知しており、衝撃の展開が続くこれからの放送回はドラマオリジナル。毎週日曜夜9時より、全国TBS系にて放送中。
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵
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