ご縁があって、日本生まれの素材に接する機会が増えています。
ひとつはジェイアール名古屋タカシマさんとご一緒して実現した「尾州織物」とのコラボレーション。「尾州織物」は海外の一流メゾンからも高く評価されている日本が誇る織物で、今回はその中でもデッドストックとして眠っていた尾州ツイードを使ってバッグやポーチなどを作りました。
もうひとつは、出演させていただいた『世界はほしいモノにあふれてる』でもご紹介した岡山県・児島のデニムです。
もともと日本には、着物に続いて洋装の素材、ツイードやジャカード、デニムといった繊維産業が各地できちんと発展していたんですよね。でも、跡を継ぐ人がいない、他のアジア諸国の工場の隆盛などの状況もあり、日本の繊維産業は1990年ごろをピークに縮小傾向にあります。
私自身、実際に各地で作られる織物に触れて、もっともっとこの素晴らしい素材、そして技術を伝えていかなくちゃと思うようになりました。
尾州織物の見学で愛知県津島の工場に行ったときのこと。職人のひとりにとても若い方がいたんですが、その子が作るツイードが本当に素晴らしくて。若い感性で今までに見たこともない、新しい解釈のツイードを織っていたんです。あえて金糸を入れないツイードだったり、裏表を逆にしていたり、ダブルフェイスになっていたり。その日の気温や湿度によっても、織るときの力加減を繊細に変えて、丁寧に丁寧に作っている。それにもう感動してしまいました。
岡山県の児島のデニムも本当に興味深かったですね。加工の大事な部分は機械ではなくて手作業。だから、まったく同じものはひとつとしてないんです。
児島のデニムはパリにあるセレクトショップ「メルシー」のポップアップで紹介されていたり、海外では日本の素材がブームになっている。本当にいい素材が日本には多いから、国内でももっともっと注目されるようにしていきたいと思っています。
“生産者のわかる野菜”みたいに
ファッションも作り手の顔がわかる産業に
食品だと産地や生産者がわかるものも増えていますよね。お洋服もそんなふうになってほしい。誰が作っているというところまで伝えることで、これからの働き方の選択肢を広げていくこともできるはず。たとえば、ファッションに関わりたいと思ったら、今だとアパレルメーカーという選択肢がぱっと出てくると思いますが、それだけじゃなくて、その手前の織物を作る、というのもファッションに関わる仕事の選択肢のひとつになる。
もっともっと素材と消費者の距離をもっと近づける。それが今後、私自身も取り組んでいきたいテーマのひとつです。
構成/川端里恵(編集部)
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