女性誌を中心にフードライターとして活躍しつつ、フィギュアスケートの記事も担当している齋藤優子さん。彼女から届いた「あまりにも悲しい、信じられません」と、クリス・リードさんへの追悼。長年にわたり日本のアイスダンスを牽引した存在の輝きと軌跡に思いを馳せ、ご冥福をお祈りしたいと思います。

アジア勢最高の11位となった2018世界フィギュアでのフリーダンスの、フィニッシュシーン。写真:ロイター/アフロ


長年にわたって日本のアイスダンス界を牽引
記憶に残る2017-2018シーズンのフリーダンス
『ラストエンペラー~戦場のメリークリスマス』


訃報を知って、真っ先に観たのは、2017-2018シーズンのフリーダンス『ラストエンペラー~戦場のメリークリスマス』でした。ピアノの音色にのせて、村元哉中選手が桜、クリス・リード選手が風となって紡いだ、儚くも美しい日本のカップルならではの詩情あふれる舞。咲き誇る桜を、そして散りゆく桜を表現したであろう、アクロバティックだけれど、優雅に流れるリフトを観ながら、思わず胸が詰まってしまった。フィギュアスケートの元アイスダンス選手、クリス・リードさんが、3月15日、心臓突然死で急逝されました。30歳になったばかり。2006-2007シーズンから、当初は姉のキャシー・リードさんとの、キャシーさんの後は村元選手とのカップルで、ほんとに、ほんとうに長い間、日本のアイスダンス界を引っ張ってくれた、かけがえのないアイスダンサーでした。

アジア勢初の表彰台となった、2018四大陸選手権。フィギュアスケートファンにとっては、歴史に残るひとコマ。写真:AP/アフロ

男女シングルにおいては、いまや表彰台争いに欠かせない存在になった日本を含むアジア勢ですが、カップル競技に目を移せば、まだ道半ば。
ペアでは、中国が強豪国の仲間入りを果たしてはいるものの、氷上の社交ダンスとも呼ばれるアイスダンスでは、ロシアを含むヨーロッパ勢、欧州勢が依然リード。
アジア勢は、世界選手権やオリンピックといった大きな大会での表彰台に、なかなか手が届きません。そんな中、2018年四大陸選手権大会で3位に入り、アジア勢初の表彰台に。そして、同年の世界選手権では、トップ10まであとわずかの、アジア勢歴代最高の11位になったのが、村元哉中&クリス・リード組です。

 

そうした彼らの活躍を見て、アイスダンスを志す若手スケーターが増えているという記事を目にしたことも。

10シーズンにわたる競技生活の中で、全日本選手権優勝10回。世界選手権11回、冬季オリンピック3回出場。ケガと戦いながら、その裾野を広げ、世界との距離を着実に縮めていってくれたのが、クリスさんなのです。

 
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