冬季五輪には3大会連続出場。姉のキャシーとのカップルで出場したソチ五輪での、団体戦のキスクラ風景。写真:日刊スポーツ/アフロ

前回、世界ジュニアの記事でも触れたが、フィギュアスケートはスポーツであると同時に、芸術でもある。その演技には、ヨーロッパ、北米、アジアそれぞれの“香り”のようなものがあって、それもまた楽しみのひとつ。だからこそ、シングルでは欧州勢の頑張りに期待したいし、逆にアイスダンスでは、アジア勢に台頭してほしいと切に願ってきた。冒頭に記したフリーダンスの演技には、その兆しを感じることができたし、日本人カップルならではの世界観が垣間見えた気がして、うれしかった。

バンクーバー五輪出場を決めた2009全日本選手権にて。この時から10年。昨年12月に競技からの引退を発表。今年から、姉と一緒に関空アイスアリーナでスケーターの卵たちの指導にあたる予定だった。写真:アフロスポーツ

先日、アイスショーの解説で町田樹さんが“アイスダンス・ルネサンス時代”への期待を語っていたが、その言葉どおり、いま、アイスダンスへの注目度がにわかに高まっています。要因のひとつは、以前の記事にも書きましたが、今シーズン、国際デビューするや、人気がまさにうなぎ昇りのジュニアカップル、吉田唄菜&西山真瑚組の登場。

 

結成1年目にして全日本ジュニアを制覇。初出場した先日の世界ジュニアフィギュアスケート選手権では、なんと、日本史上最高位となる12位に。そんな彼らと競う若手カップルもいるし、シニアを引っ張る小松原美里&ティム・コレト組もいれば、来シーズンからは村元哉中&高橋大輔組も参戦します。志す若手も増えています。

まさに、クリスさんの経験と実績が物を言う時が来ていただけに、そして、なにより自身が“これから、キャシーといっしょに、日本のアイスダンスをニューエイジにする、あたらしい、むずかしいジャーニーのはじまり”(ブログより)と指導者としての思いを綴っていた矢先だけに、悲しくて、残念でなりません。

カップル競技選手の育成に力を入れていくという、誕生したばかりの関空アイスアリーナで、アイスダンサーの卵たちを指導する予定だったそうです。でも、たくさんのものを遺してくれたから……。いままでアイスダンス界を引っ張ってきてくれて、ありがとうございました。そして、これからも、日本のアイスダンサーたちを見守っていてくださいね。
 

文/齋藤優子
構成/藤本容子

 

前回記事「【フィギュア】日本のメダル濃厚な男子シングル。世界ジュニア2020の注目選手は?」はこちら>>

 
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