2020年1月クールの地上波ドラマで「ドハマりした!」との声も多かった「テセウスの船」。イケメン☓サスペンスを盛り上げたのは、これまで日本のドラマにはあまり見なかった「タイムスリップ」という設定です。実は韓国ドラマにはこの設定がスゴーく多くて、しかも名作揃い!ということで、今回は「タイムスリップ」を使った名作韓国ドラマ3本をご紹介します!

おこもり生活でストリーミング三昧、でもそろそろネタ切れ!という方も、イケメン☓サスペンス☓タイムスリップ(+α!)で、見始めたら一気観必至です!


伏線の回収も気持ちいい! ラブ度高めのイケメンバディもの
「愛の迷宮-トンネル-」

1985年、連続女性殺人事件を捜査中の刑事パク・グァンホは、容疑者を追って入ったトンネルの中で殴られ昏倒。なぜか2016年のソウルで目覚めたグァンホは、事件がいまだ未解決のままであることを知る……。

刑事モノなのにラブ度高めなのは、主人公グァンホが妊娠した新妻を殺人鬼がいる世界に残してきているから。離れ離れの夫婦が時空を超えて思い合う気持ちが切なく、2016年で妻が消息不明になっていることも、サスペンスを盛り上げます。

80年代的「熱血系の凄腕デカ」のグァンホ(チェ・ジニョク)と、2010年的「クールなエリート捜査官」のキム・ソンジェ(ユン・ヒョンミン)の、イケメン・バディも大きな見どころ。まったく気が合わないふたりの関係性が、ある事実が明らかになる途中からガラッと変わるのも面白いです。30年後にチーム長になっているかつての弟分ーーすでにオジさんになっているのにヤケに弟分な刑事との掛け合いや、スマホなど最新技術や現代ファッションに戸惑う様子など、笑いも多め。事件関係者の伏線が、ラストに向けて見事に回収されていきすごく気持ちがいい作品です。

題材は韓国人なら誰もが知る未解決事件「華城連続女性殺人事件」(時効後に犯人を特定)で、同じ事件を扱ったポン・ジュノ監督の出世作『殺人の追憶』にインスパイアされている作品。映画のラストシーンからこのドラマが始まるような雰囲気もあるので、併せてみてもいいかも。

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エリート女医と李朝朝鮮時代の鍼灸師のラブ・コメディー
「医心伝心〜脈あり!恋あり?〜」

天才的な鍼灸の腕を持ちながら出世とは無縁、その状況にスネながら貴族から高い金をふんだくって、モグリの治療を続ける下級医官ホ・イム。ところが、その評判から大抜擢された王の治療に失敗。追われて矢を受け落下した川で意識を失いーー目覚めるとそこは、現代のソウルだった……。

現代にタイムスリップした李朝朝鮮時代の鍼灸の達人と、鍼灸医が大嫌いなエリート女医チェ・ヨンギョンが騒動を巻き起こすラブ・コメディ。主演のキム・ナムギルは、『赤と黒』『サメ 愛の黙示録』など、クールなダークなイメージでファンをうっとりさせた人気スターですが、このドラマでは一転、妙に丁寧で礼儀正しいのに、現代文明にいちいち腰を抜かし、度肝を抜かれ、翻弄されヘロヘロになる姿がめちゃめちゃ笑えます。

対するヨンギョン役のキム・アジュンは、韓国の女優さんのなかで1,2を争う私のお気に入り。ファッショナブルでセクシーで鼻っ柱が強く仕事もバリバリ、なのにキュートでファニーという現代的なコメディエンヌぶりで魅了します。

東洋医学にこだわる韓方医の祖父が病気の母を死なせて以来、韓方医が大嫌いなヨンギョンが、西洋医学で救えない命を救っていくホ・イムによって、トラウマから解放されてゆきます。彼女を思う幼馴染のイケメン医師の存在もあり、そこに病院内の勢力争いも絡んで、三角関係を盛り上げます。

過去の時代で出世できずに悔しがっていたホ・イムが、現代で出世と引き換えに魂を売ることを強いられ、自分の生き方を見直してゆきます。過去には彼の治療を待っている人もいるし、何ををきっかけに時を越えてしまうのか、いつそれが起こるのかもよくわかりません。さらにヨンギョンの出生の秘密まで絡んできて、後半はハラハラドキドキです。

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過去と現在が絡み合う!スピード抜群の極上サスペンス
「シグナル」

過去に起きた未解決の誘拐事件を、2015年の時効寸前に解決した新人のエリートプロファイラー、パク・ヘヨン刑事。解決の糸口となったのは、警察の処分品だった古い無線機から聞こえた情報だった。無線機はなぜかその事件を捜査中の担当者、2000年のイ・ジェハン刑事とつながっていたのだ……。

日本でも坂口健太郎と北村一輝でリメイク「シグナル 長期未解決事件解決班」としてリメイクされた傑作ドラマ。パク刑事とイ刑事、そしてイ刑事の恋人のベテラン女性刑事チャ・スヒョン刑事が、未解決事件に挑むサスペンス。次々と発生する事件が、過去と絡み合ってスピード感満点に展開し、第一話から手に汗握りっぱなしです。

さらに作品を貫いている最大の謎は、なんと第1話で2000年に殺されてしまうイ刑事の死。「1989年の俺とつながったら、この事件には関わるなと伝えてくれ」なんて遺言を残すあたりも、タイムスリップ・サスペンスらしい展開を盛り上げます。

「過去が変われば現在が変わる」という『バック・トゥ・ザ・フューチャー』的な展開の中には、「過去を変えること」の「正義」と「罪」の両面を描き、人間ドラマとしての深みもバッチリ。

パク刑事を演じる主演のイケメン俳優イ・ジェフンのキリリとした凛々しさ、いかにも人のいい人気俳優チョ・ジヌンが演じるシャイで真っ直ぐなイ刑事の人間味、クールで男勝りな顔の裏に、イ刑事への一途な恋心を隠すチャ刑事役のキム・ヘスなど、俳優たちも魅力的!

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過去と現在を行ったり来たり、過去が変わると今が変わる? 時間経過も人間模様も複雑なタイムスリップものは、まとまった時間の取れる時にこそいっき見におすすめ!
ぜひ「次のエピソードを見る」ボタンを押さずにいられない沼へどっぷりハマってくださいね。


前回記事「「パラサイト」はなぜアカデミー賞を獲れたのか? オスカーの抱えるジレンマとは」はこちら>>

著者一覧
 
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映画ライター 細谷 美香
1972年生まれ。情報誌の編集者を経て、フリーライターに。『Marisol』(集英社)『大人のおしゃれ手帖』(宝島社)をはじめとする女性誌や毎日新聞などを中心に、映画紹介やインタビューを担当しています。

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文筆家 長谷川 町蔵
1968年生まれ。東京都町田市出身。アメリカの映画や音楽の紹介、小説執筆まで色々やっているライター。著書に『サ・ン・ト・ランド サウンドトラックで観る映画』(洋泉社)、『聴くシネマ×観るロック』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、共著に『ヤング・アダルトU.S.A.』(DU BOOKS)、『文化系のためのヒップホップ入門12』(アルテスパブリッシング)など。

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ライター 横川 良明
1983年生まれ。大阪府出身。テレビドラマから映画、演劇までエンタメに関するインタビュー、コラムを幅広く手がける。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。twitter:@fudge_2002

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メディアジャーナリスト 長谷川 朋子
1975年生まれ。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情を解説する記事多数執筆。カンヌのテレビ見本市に年2回10年ほど足しげく通いつつ、ふだんは猫と娘とひっそり暮らしてます。

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ライター 須永 貴子
2019年の年女。群馬で生まれ育ち、大学進学を機に上京。いくつかの職を転々とした後にライターとなり、俳優、アイドル、芸人、スタッフなどへのインタビューや作品レビューなどを執筆して早20年。近年はホラーやミステリー、サスペンスを偏愛する傾向にあり。

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ライター 西澤 千央
1976年生まれ。文春オンライン、Quick Japan、日刊サイゾーなどで執筆。ベイスターズとビールとねこがすき。

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ライター・編集者 小泉なつみ
1983年生まれ、東京都出身。TV番組制作会社、映画系出版社を経てフリーランス。好きな言葉は「タイムセール」「生(ビール)」。18年に大腸がん発見&共存中。

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ライター 木俣 冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書に、講談社現代新書『みんなの朝ドラ』をはじめ、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』ほか。企画、構成した本に、蜷川幸雄『身体的物語論』など。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『連続テレビ小説 なつぞら上』などドラマや映画のノベライズも多数手がける。エキレビ!で毎日朝ドラレビューを休まず連載中。

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ライター 渥美 志保
TVドラマ脚本家を経てライターへ。女性誌、男性誌、週刊誌、カルチャー誌など一般誌、企業広報誌などで、映画を中心にカルチャー全般のインタビュー、ライティングを手がける。yahoo! オーサー、コスモポリタン日本版、withオンラインなど、ネット媒体の連載多数。食べること読むこと観ること、歴史と社会学、いろんなところで頑張る女性たちとイケメンの筋肉が好き。寄稿中の連載は、
「yahoo!ニュース」『アツミシホのイケメンシネマ』
「COSMOPOLITAN」日本版『女子の悶々』
「COSMOPOLITAN」日本版『悪姫が世界を手に入れる』
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