【小島慶子】今だから子どもに伝えたい「アフターコロナを生きるために大事なこと」_img0
 

リモートワークで自宅にいると、子どもたちとの会話の時間も自然と増えるもの。今は、大人も子どもも、全世界で未経験の危機に立ち向かっています。普段とは違うことが見えてくるチャンスでもあります。お子さんの年齢にもよりますが、そんなことについてゆっくり話をしてみるのもいいかも。

小島慶子さんからミモレ5周年に頂いたメッセージ「まだ見ぬ友への信頼」>>>

 

私には高3と中3の息子がいます。3月の後半から学校は自宅学習に移行し、今は秋休み中(南半球の4月は秋)。5月からの新学期も、オンラインで授業を行う可能性が高いです。こんなに長い間自宅にいるのは彼らも初めてのことです。私は8000キロ離れた日本におり、いつ家族に会えるかもわからない状況。でもみんな部屋にいるので、フェイスタイムをつなぎっぱなしにして、互いに好きなことをしながら、声をかければ聞こえる状態を維持しています。

息子たちの生活にメリハリをつけるために、朝起きたらニュースを読むこと、勉強は後回しにしないこと、食事づくりなど家事を積極的にやること、紙の本を必ず読むこと、スマホを手放す時間を作ること、夜更かしをしないことをルールにしています。夕食の席では、印象に残ったニュースについて話し合ったりしています。あとは他愛ない話や冗談も。両方大事ですからね。

今は、世界中のリーダーが同時に同じ危機に取り組んでいるという前代未聞の状況です。だからよく見ておきなさい、と息子たちに話しています。同じ危機に対して、どんな対処をするのか、どんな言葉を語るのか。うまくいく国とそうでない国があるでしょう。それはなぜなのかをよく見て、覚えておくんだよ。
リーダーを選ぶということは、危機の際に自分の命を預ける相手を選ぶということなのだから。

そして、君たちが大人になって生きていく世界は、コロナ危機の前とは違うものになると言われているんだよとも話しています。働いてお金を手に入れ、多くのものを所有し、他人と差をつけることが安泰への道だと言われていた時代は、格差を広げ、危機の際に多くの人が脆弱な立場に追いやられる社会を生み出してしまいました。しかもその弱い立場に置かれる人たちの仕事はエッセンシャルワーカーと言われる、私たちの命と生活を直接支える、なくてはならない仕事なのです。今トラックを運転する人やスーパーマーケットの店員さんや清掃をする人がいなかったら、私たちは巣篭もり生活で命をつなぐことができません。医療の現場でも、大勢の看護師が最前線で闘っています。介護士もまさに命を支える戦いをしています。けれどこれまでそうしたケアワークは、重要な仕事とみなされず低い賃金で処遇されてきました。ことに女性たちが最も弱い立場で危機にさらされています。

お金を右から左へ動かす仕事は莫大な利益を手にするのに、その人たちが生きていくために必要不可欠な、安全で豊かで衛生的な生活を支える人々が軽んじられるのはおかしいよね。君たちが生きている間に、また同じことは必ず起きる。それは新たな感染症の流行かもしれないし、気候危機による食糧難や水不足かもしれない。そのときにどうやったら生き残れるのかを、今から考えておかなくちゃいけないんだよ。つまり危機の最中にある今、どのような社会をどのようなリーダーと作っていくべきなのかを、君たちの世代が真剣に考えておかなくちゃいけない。
 

 
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