【小島慶子】コロナ危機で夫婦の対話は深まる?「夫と話すべきなのは…」_img0
 

今回のコロナ危機をなんとか生き延びたとしても、必ずまた何か不測の事態は起きます。今度は気候危機による食糧難や水不足、次なる感染症の流行、地震や水害などの自然災害、あるいは夫婦どちらかの病気かもしれない。命に向き合わなくてはならない日は必ず来ます。だから結果がどう出ようと、話しておいた方がいいのです。

もし、今回「こいつ本当にダメだ・・・」という残念な結果が出たら、それはこの先の二人の関係をどうするべきかを真剣に考える契機になるでしょう。早めに気がついてよかった、と前向きに捉えることもできます。もちろん夫婦はいろいろな条件で関係を成り立たせているので、考えが合わないからといってうまくいかないとは限らないし。相手に求めるものの優先順位をはっきりさせるためにも、話し合いをしてみるといいと思います。

では、一体何を話せば?単純です。コロナ危機で、あなたが一番守りたいと思うものは何か、恐れるものは何か、新しく生み出したいと思うものは何かを、まずはじっくり考えてみましょう。その上で、あなたはどう?って夫に聞いてみる。きっかけはテレビでもネットの記事でもなんでも構いません。コロナ危機の先の見えない不安の中でどう生きるか、っていう話は、そこら中にあふれていますものね。

もう皆さんとっくにご存知のように、なぜか男性は頭の中にある感情や思考を言葉にするのが非常に下手くそです。答えるのを面倒くさがるのは、語れないことが露呈するのを恐れているのかもしれないですね・・・。
私たち夫婦も、結局これでエア離婚に至ったのです。16年前に夫がやった行いが、妻としてではなく同じ人間としてどうしても許せなかったのですが、夫はそれについてちゃんと語ることを避けてきたので、絶望したというわけ。でも、今回の危機で、それが少しずつ変わりつつあります。
 
頭の中を語れないからといって、何も考えていないとは限らない。むしろ語らないからこそ、深く思考できることもあるよなと、夫とのやり取りの中で次第に思うようになりました。多分これは20年以上にわたって様々な経験を共にし、この危機を乗り切る仲間として夫に全幅の信頼を置いているからこその気づきだと思います。命について日々話し合い、遠く離れた場所から家族を思うしかない私は、息子たちのそばに夫がいてくれて本当に良かったと思っています。これまでのいろんな不満や蟠りも、「今は命と笑顔が一番大事」と思考がシンプルになったら、ひゅっと小さくなりました。

きっとこれは、非常事態ならではの反応なのでしょう。でもこれまでずっと、夫を許せないことに苦しんできたので、今は気持ちがだいぶ楽です。私は夫がしたことは一生許さないけど、もしかしたら、許さなくても一緒に生きていけるのかも。その発想はなかった!と、ちょっと光が見えた気がします。

もしも今あなたが呑気すぎる夫にイライラしているなら、あるいは強がりばかりの夫にうんざりしているなら「この危機の後も一緒に生きていくために、今話しておきたいんだ」って、切り出してみるといいかもしれません。そんな話をできる人なんて、一生に数人もいないかもしれないのだし。それで家の外も中も危機になったらどうしよう!ってちょっと心配かもしれないけれど、せっかくなので、ぜひ。

 

前回記事「今だから子どもに伝えたい「アフターコロナを生きるために大事なこと」」はこちら>>

 
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