大杉漣さんの遺作ともなり、放映中から非常に評価の高かったドラマ『バイプレイヤーズ』のメイン監督を務め、映画『アズミ・ハルコは行方不明』、『君が君で君だ』などを手掛けた映画監督・松居大悟氏をご存知でしょうか。劇団ゴジゲンの主宰も務める松居氏は、ベテランから若手まで数多くの俳優たちが信頼と才能への期待を寄せる、新進気鋭の映画監督なのです。

そんな松居大悟氏が、小説デビュー作となる『またね家族』を刊行! 松居氏が「一番に読んでもらいたかった」と語る又吉直樹氏との対談が実現しました。今回の小説は“家族”、おもに“父と息子”がテーマ。今まで「家族を描くことを避けてきた」という松居氏と、「家族にしか興味がない」と語る又吉氏。二人の創作への姿勢と想いとは……。

 

インタビュー・文:瀧井朝世


又吉さんには真っ先に読んでもらいたかった


松居大悟氏(以下、松居) はじめて会ったのは三年ほど前ですよね。又吉さんが、僕がやっている劇団ゴジゲンの舞台「くれなずめ」を観に来てくださって。

又吉直樹氏(以下、又吉) 松居さんとも僕とも仲のいいクリープハイプの尾崎世界観さんから「舞台面白いですよ」と聞いていたので、「じゃあぜひ」と言って観せてもらったんです。観て、すごく好きでしたね。僕はその人が自分がやってることを信じているかどうかがすごく重要なんですが、舞台上で、何かを信じてる人たちが全力で表現していて、感動しました。

 

松居 ありがとうございます。「くれなずめ」は、結婚式の披露宴と二次会の間の時間の話で……。

又吉 本来、日記に書かない時間ですよね。日記に書かれたり記憶に残ったりするのは披露宴とか二次会のことだけど、あの舞台はその間の「なんか時間あるから一緒におろうか」みたいな時の話で、そこが好きでした。

 

松居 僕はもともと形容できない瞬間とか感覚をテーマにしているんです。あの日は舞台の後、一緒に飲みましたよね。僕が前から又吉さんの小説を読んでいたので、そういう話をしたりして。今回『またね家族』を書いた時、又吉さんと尾崎くんには最初に読んでほしかったんです。やっぱり僕が小説を書こうと思ったのは、二人が小説を書いていたことが大きいので。

又吉 半分くらい進んだところで松居さんに「めっちゃ面白いです」ってメールで送りましたよね。まずびっくりしたのが、文章がめっちゃうまかったこと。いろんな本を読んでいると、自分のテンポと合わへんな、と思うものもあるじゃないですか。でも松居さんの読み始めたら、めっちゃリズムが合うわ、って。

松居 めっちゃ嬉しい……!


松居さんの作品は「分かる」のもういっこ先が書いてある


又吉 分かるな、というところがいっぱいあって。分かるといっても、こうなったらこうなると全部予想できてしまうと楽しめないけれど、松居さんはもういっこ先を細かく書いてくれるんですよね。途中までは知ってる風景やけど、そのもういっこ先、そこは知らんかったなというところまで書いてくれる。冒頭のところで完全につかまれましたね。

松居 主人公がやっている劇団の公演が終わって、ロビーで面会している場面ですか?

 

又吉 そう。僕はライブをしても楽屋面会はあんまりしないんです。でも演劇では面会しないといけない雰囲気がありますよね。主人公が説教してくる人につかまっているうちに、本当に感想を聞きたかった人が帰ってしまうところとか、めっちゃ面白かったです。なるほど、この細かな感覚で書いていくんやと思いました。小説の冒頭って、世界に対してこういう認識を持っている人の話です、という表明になるじゃないですか。この時点で絶対に面白いと思いました。松居さんは、小説を書くのはこれがはじめてですよね。

松居 はい。四、五年前から「小説に興味ないですか」と出版社の人に言われていたんですけれど、僕は演劇とか映画とか、みんなで作ることを続けてきたので、編集者と二人で何か作るということがちょっと怖かったんです。でも去年、映画を撮る予定が延期になって五ヵ月くらい時間ができたり、父の七回忌があったりして、自分が逃げ続けてきた家族との関係性に向き合おうと思いました。

又吉 ああ、小説は途中から家族の話になっていきますよね。

 
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