緊急事態宣言が解除されましたが、長い時間一緒に過ごすことで、その仲が険悪になった夫婦にとっては、まだまだ「これで解決」とはいかなそう。芸能界でも屈指の円満夫婦と言われる、2丁拳銃・修士さんの妻である野々村友紀子さん。「コロナ禍の今こそ夫婦関係を見直す最大のチャンス」という、その見直し方を教えてもらいました。
第1回「お笑い芸人の最強妻が教える「夫婦喧嘩」を避ける5つのコツ」はこちら>>
野々村友紀子さん
1974年8月5日生まれ。大阪府出身。芸人として活動後、放送作家に転身。バラエティ番組の企画構成、吉本総合芸能学院東京校の講師、アニメやゲームのシナリオ制作など多方面で活躍中。お笑いコンビ「2丁拳銃」の修士さんの妻としても知られる。著書は『夫婦喧嘩は買ったらダメ。勝ったらダメ。』(産業編集センター)、『夫が知らない家事リスト』(双葉社)など多数。
我慢だけでコロナ禍は乗り切れない
外出自粛要請の際には「リモートワークで毎日夫がいるのがストレス」という妻の声があちこちで聞こえるように。芸能界でもの円満夫婦と言われ、『夫婦喧嘩は買ったらダメ。勝ったらダメ。』という著書もある野々村友紀子さんは、この緊急事態にどのように対応しているのでしょう?
「夫婦がこんなに長い時間顔を突き合わせるのって、おそらく人類が始まって以来初めてのことじゃないでしょうか(笑)。どんなに好きな相手でも、さすがに24時間視界に入るとイラっとするのは仕方ない。よく『結婚は我慢』と言いますが、我慢だけでは結婚は長続きしないと思うんです。だから私は常に、“いかに小さな我慢を減らせるか”を心がけていて。我慢していることを早い段階で、冷静に夫に伝えるようにしたり、そもそも我慢が生まれないよう先んじて手を打ったりするようにしています」
たとえば今なら、夫婦があまり長い時間顔を突き合わせていると、何はなくともストレスがたまってきます。そうならないよう野々村さんは、工夫して個別の時間を設けるようにしているそう。
「私の場合は、できるだけ個室にこもって仕事をするようにしています。本当は今日のミモレさんのオンライン取材も、リビングのほうが背景が綺麗だしそっちでやりたかったんですけど、家族がいるのであえてこの散らかった書斎でやっているんですよ。家族だからずっと一緒にいても平気、という訳ではない。そういう、自分の気持ちに気づいて、我慢を生まない工夫は必要やと思います」
最難問である“家事をしない夫” その改善法は?
夫が家にいることでもっとも多い不満は、やはり「家事をしない」というもの。姿が見えなければ気にならなかったものも、目の前にいながら何もしないとどうしても腹が立ってしまいます……。
「リモートワークなら通勤時間分が労働時間から減っているわけですから、その分家事をやってもらいたいですよね。でもそこで『やってあげるよ』とか言われたら、これまた腹が立ちますよね。『私はやってもらってんのか?』と。だから上から目線で夫に言われる前に、自分から『一緒にやろう』と誘うのがいいと思います。『一緒にお皿を出そう』とか『私はこれをやるから、野菜を炒めるのだけやって』とか。できれば可愛く言えると良いですよね、やっぱり。まあ、この方法も、夫の調子のいいときしか効かないと思います(笑)。けど、そうやってコツコツ仕込んでいくしかないのかな、と思ってます」
反対に、家にいることで妻の家事に口出ししてくる夫も少なくないよう。このような夫の場合はどう対処すれば良いのでしょう?
「何か言ってきたら、『それ、アナタがやってくれていいよ〜』とか『直してくれていいよ〜』と言ってみるのがいいと思います。ついでに『助かる!』というひと言も添えて。こういう上から目線の夫には、頼る感じで伝えるほうが効果的だと思います。間違っても『お前がやれよ』とか言ったらダメ。言いたくなる気持ちは痛いほど分かりますが、向こうも意地になって絶対やらなくなってしまいますから」
そして大事なのは、夫が家事をする際は決して否定をしないことだ、とも教えてくれました。
「『洗い物の水、散らさんといて』とか『油が飛んどるがな』とか、ついつい言いたくなりますけど、そこはグッとこらえて。思ってなくても『上手いなあ、天才やなあ』とひたすら持ち上げてください。家事もそうですけど、こちらが夫にいろいろ不満に感じているように、夫も不満に感じていることがあるはず。たとえば私は夫が洗面所の電気を消さないのが不満なんですけど、文句を言うのはやめて、『私が消し忘れているときもあるはず。そのときは夫が消してくれているかもしれない』と思うようにしています。夫婦って、お互い様でおかげ様なんですよ。だから私は、そうやって『これは別にええわ!やっとくわ!』と考え方を変えるようにしています。そうやって考え方を変換すれば、我慢じたいも減っていきますから」
会話のない夫婦が会話を復活させるには?
これまではわりと平気だったけれど、今回のコロナ禍でイライラが募ってしまった。そんな夫婦がいる一方で、もともと会話がなかったため、ステイホームで逃げ場を失い精神的に限界がきている……という夫婦も。野々村さんは「むしろ今は夫婦仲を立て直すいい機会にもなりうる」と言います。
「業務連絡くらいの会話しかしていない夫婦って、決して少なくないですよね。今までは仕事があって離れていられたから何とかなったけれど、そうもいかなくなった……。だから考え方を180度変えて、いまを『夫婦の会話を増やす機会が与えられた』と捉えてみてはいかがでしょうか。オススメは、とにかく同じ話題を見つけることです。たとえば同じドラマを見てみるとか、相手が好きな音楽を聴いてみるとか、同じ本を読んでみるとか。自分の興味だけでなく、相手の興味にも合わせてみる。それをおこなう時間は個別でもいいんですけど、その感想を言い合う時間を設けるんです。うちはよく一緒にテレビを見るので、その感想を言い合うんですけど、まあ正直、話が合わないこともあります。でも、その中にも『分かる分かる!』と重なる思いが隠れていたりするんですよ。絆って、その重なる思いが積もって強くなっていくものやと思うんです」
そういった努力のおかげか、野々村さんと夫は会話の多い夫婦で、よく二人で飲みながらいろいろなことを話すそう。今は仕事での外出が減ったため、その回数が増えたし、深夜までダラダラ話すことも多いと言います。
「当たり前ですけど、夫婦ってやはり会話はあったほうがいい。子供が巣立っていった後もずっと一緒にいるわけですから、会話がないと人生の後半がしんどいことになってしまいますよね。多分、多くの妻は年月の経過とともに、夫の嫌なところばかりが目について会話をする気も失っていくんだと思います。でも出会った当初って、夫のそういうところを好きだったり尊敬していたはず。『このグズグズしてるところも、かつては”のんびりしていていいわ~”と好きだったんだ』とか。会話を増やすために、そういう思い出し作業というか、捉え方の変換作業もちょっと踏ん張ってやってみてください」
二人で幸せに生きていくためにやってはいけないこと
夫婦だから何を言ってもいい、夫婦だからいちいち話さなくてもいい。野々村さんは「そんな“夫婦神話”に惑わされてはいけない」と言います。そのため結婚して18年になる今も、「いってらっしゃい」や「おかえり」のひと言を怠らないのはもちろん、夫婦に関することは小さなことでもできる限り相談するなど、二人で幸せに生きていく方法を探り続けているそう。そんな野々村さんに、「幸せ妻になるルール」があるとしたら何だと思うか伺ってみました。
「よく、『夫のことは大きな子供だと思うようにしている』という妻のひと言を耳にしますよね。たしかにそう思うとラクになれる部分はあると思うんです。言っても言ってもできないのは子供だからだ、と。だけどそれって、夫を男として見ていないということ。自分は『アナタのお母さんじゃない!』などと不満に思っているのに、矛盾していますよね。だから夫のことをちゃんと男として見たほうがいいと思うんです。そうすれば自分も女としていられるはず。やはりお互い、ずっと“綺麗とカッコいい”でいたいし、気も遣い合いたいじゃないですか。でもそこを自分で手放してしまうと、夫もそういう扱いをしてくるようになる。相手に興味もなくなってくる。そういった意識が効いているのかどうかは分かりませんが、うちは今も会話の多い夫婦ですし、ケンカもむしろ結婚したときより年々減っていっています。そうですね、もしかしたら8割くらい減っているかも。夫婦として、妻としての幸せルールがあるとしたら、個人的にはそんなところかな、と思っています」
取材・文/山本奈緒子
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