『未来の年表』著者・河合雅司さん「コロナと少子高齢化が女性の働き方を変えていく」#コロナとどう暮らす_img0
 

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの暮らしや働き方だけでなく、人生についての意識や価値観も変えてしまいました。これまでの“当たり前”は通用しない、コロナ後の社会がどうなるのか不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

人口減少と少子高齢化の日本を分析した『未来の年表』シリーズの著者として知られ、5月末に『「2020」後  新しい日本の話をしよう』を上梓した河合雅司さんに私たちに迫っている未来について、3回にわたって伺いました。

第一回のテーマは「女性の働き方の未来」です。

 


超高齢社会の主役こそ女性という事実


日本で少子高齢化が加速しているのは皆さん、ご存じのとおり。なかでも、超高齢社会の主役は女性たちだといえます。2019年の統計では、男性高齢者が1548万人なのに対して女性高齢者は2015万人。そして現在、女性の平均寿命は87.64歳(男性は81.34歳)……なんとなく感じていたこととはいえ、こうして数字の差を目の当たりにすると、いかに女性のほうが長生きする傾向にあるかがわかりますよね。

もちろん、高齢化は突然にやってきたわけではありません。
これまでを振り返ってみると、日本が「高齢化社会」(高齢化率7%以上)になったのが1970年。そこから24年後の1994年には「高齢社会」(高齢化率14%以上)を迎えました。7%から14%までわずか24年というのは、世界でも群を抜いてはやいスピードです。例えばドイツは40年、アメリカは72年、フランスは115年もかかっています。つまり日本は他国と比べてより急速に高齢化が進んでいるという特徴があり、そのスピードはしばらく緩むことはないと思われます。

『未来の年表』著者・河合雅司さん「コロナと少子高齢化が女性の働き方を変えていく」#コロナとどう暮らす_img1
2042年には高齢者の数がピークになる予想で、3935万人と推計されています。そこから数そのものは減少に転じますが、若い世代がさらに減るため、高齢化率は上がり続け、2065年には高齢化率38.4%となる予測。なんと、2.6人に1人が65歳以上という時代がやってきます。


誰でもひとり暮らしになる可能性がある

まさに「おばあちゃん大国」となるわけですが、決して遠い未来の話ではありません。
現在、すでに日本女性の約3人に1人が65歳以上の高齢者です。もっといえば、今年、日本女性の過半数が50歳以上になりました。
2020年は、統計上「女性高齢化元年」ともいうべき象徴的な年なのです。

今後、高齢女性のひとり暮らしが増えるのは間違いありません。
男性よりも長生きする可能性が大きい女性は未婚/既婚、子供の有無を問わず、最後は独りになると考えておいたほうがいいでしょう。

そこで、老後の収入をどうするのか? 
これは、現役時代から念頭においておきたい問題です。

かつては働く夫と専業主婦という組み合わせが一般的だった日本の夫婦ですが、今は夫婦共働きの数がそれを上回っています。とはいえ、夫に先立たれると年金額が少なくなってしまう人も多いのではないでしょうか。
また、未婚の人も増えています。非正規などで働いてきて老後の蓄えが十分ではないというケースも少なくないでしょう。

やはり、定年後も働き続けることが有力な選択肢になります。現実的に、これからの人口減少社会では、男女問わず70代くらいまでは社会の中心にいて働くことが当たり前という世の中になっていきます。

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リモートワークの普及は女性にとって追い風に


今のところはまだ、定年まで働く女性のロールモデルが少ないこともあり、定年後の再就職も容易ではないようです。ですが、人口減少社会において女性の活躍なしには社会を維持していくことはできません。

働き方一つとってみても、大きく変化しつつあります。
今回のコロナ禍での変化をきっかけにリモートワークがより一般化され、それとともにワークライフバランスの考え方が広く浸透すれば、今まで育児や介護のために仕事を辞めざるをえなかった女性も働き続けることができるようになるはずです。

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成果主義が基本になり、人事評価の基準も変わります。年功序列的な組織風土、給与体系がなくなることは女性にとってチャンスといえます。

転職はもちろん、副業、兼業でのダブルワークも一般的になっていくでしょう。
コロナでの自粛期間中に、異業種同士で人材をシェアするジョブチェンジの試みなどもありましたが、そのように人材が流動化することは、個人だけではなく企業にとっても社会全体にとってもメリットが大きいとわかりました。働く世代の人口は減る一方なのですから、1人が社会の中で何役もこなして活躍することは必須です。

これからは所得の男女格差も縮んでいくでしょう。今や、夫婦どちらか1人の収入で家族を養うのは難しく、男性の意識も変わらざるを得ないのです。


ずっと自分らしく働くために、今すぐ始めよう!


未来に備えて、女性がすべきことは次の2つです。

【資産の棚卸し】
どこに住み、家賃をどう払っていくのかという住まいの見通しを立て、収入だけでなく、相続し得る資産も含めて老後までのライフプランを立てましょう。育児や介護の期間も仕事を辞めず働き続けることが肝心。目の前の生活だけではなく、長い人生を見越して考えることが大切です。

【自分の能力を磨く】
女性も男性も同じで、自分には何ができるのか、自分の強みは何なのかを問い続けることが必須です。現在の仕事に関わることでなくても構いません。これからは副業も一般的になってくるからです。もし何もないと思うなら、高齢になるまでに身につけていきましょう。

『未来の年表』著者・河合雅司さん「コロナと少子高齢化が女性の働き方を変えていく」#コロナとどう暮らす_img4

『「2020」後 新しい日本の話をしよう』河合雅司著 講談社刊/1300円
ISBN 976-4-06-519592-5

コロナで一変した日本はどうなる?
もう「コロナ前」には戻れない。それでは、この「2020」後の日本はどうなるのか。人口減少、少子高齢化が進む日本を大予測してベストセラーとなった『未来の年表』の著者がわかりやすく読み解きます。


河合雅司/かわいまさし
作家・ジャーナリスト、人口減少対策総合研究所理事長。高知大学客員教授、大正大学客員教授、日本医師会総合政策研究機構客員研究員、産経新聞社客員論説委員、厚労省をはじめ政府の各有識者会議委員なども務める。1963年、名古屋市生まれ。中央大学卒業。2014年の「ファイザー医学記事賞」大賞ほか受賞多数。主な著書に『未来の年表』『未来の年表2』、『未来の地図帳』(いずれも講談社現代新書)、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

構成/黒澤彩
イラスト/白井匠