ここ数年、この国の為政者たちの身勝手ぶりと、それがなんで正されないのか、ずーっとイライラしながらこのコラムを書いてきた私ですが、コロナ禍からこっち、ようやく「なんで正されないのか?」と発言することは市民権を得た感じはあるものの、もはや「なんで!?」を毎日100回くらい言ってもおっつかないほど、理不尽というか意味がわからんことばっかり。GoToキャンペーンの前倒し以降は、それが加速度的になっている気がします。

GoToキャンペーンよろしく、オリンピックも見切り発車?_img0
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説明もなし、数値的裏付けなし、理論的整合性なし、でも“決定”


そもそものところから言えば、この施策が「閣議決定」されたのは緊急事態宣言が始まった4月7日で、当初から「なぜ今?」という声は少なくありませんでした。その疑問に対して、政府はほぼ「経済を回すため。このままでは旅行業界が壊滅しかねない」の一点張りで押し切り(エンタメ業界も壊滅的ですが、そちらは「感染状況も鑑みて」開始時期は未定)、7月上旬の実施を見越して、6月19日の他府県への越境の解禁を決定します。

ところが同じ頃に、このキャンペーンの業者選定における国交省と大手広告代理店など特定企業の癒着&委託費「中抜き」の疑惑が発覚。業者を再公募するハメになりキャンペーンも8月上旬開始にリスケという流れだったのですが、7月10日の国交大臣の会見で一転、7月22日から開始が発表されます。ちなみにこの日、東京の新規感染者は243人で過去最高を記録。

そもそも議論無く「閣議決定」した「GoToキャンペーン」は、少なくともその時点(4月7日)の概要資料には「感染の流行収束後」という文言がありました。でも自分たちで作ったその言葉を守る気もなく、開始当日の7月22日の官房長官の定例会見では、いつもの「言い切っちゃえば事実」方式で、「感染状況、現時点で問題ない」と発言。ちなみにこの日、全国の感染者数は1万人超えました。

その一方で「明日から開始」という説明会では、申請書の雛形もなし、申請書をダウンロードするHPもなし、問い合わせようにも事務局もなしという、信じがたい見切り発車ぶりが露呈しました。そのテキトーぶりはもはや先進国の体をなしていないといっても過言ではありません。この時点でなんにもできてないってことは、たとえ8月上旬開始でも間に合う状況になかったんじゃないか……なんて邪推さえしたくなります。どうせ間に合わないなら、いつ始めたって良いわけで。

ちなみに7月13日に「延期は全く考えていない」と発言した官房長官は、実は東京の除外もしたくなかったらしく、なのになぜその条件を飲んだかと言えば「矢面に立つ(公明党出身の)赤場国交大臣を守るため」という一部報道も。ここですら「国民を守るため」じゃないんですね……。

説明もなし、数値的裏付けもなし、理論的整合性もなしで、何を理由で政策決定がなされているのか。利権やメンツがあるから「やる」といったら最後やるしかないのか、世の中の空気に流されて場当たり的にやってるだけなのか、それとも最初から理論的整合性なんて興味がないのか、さっぱりわかりません。

もちろんすべてにおいて常に理論的整合性が必要とは、私も思いません。ある時点での論理①と、別の時点での論理②が矛盾することはある。ただ「以前の正解は①だったが、今の正解は②」とするなら、その過程にある状況の変化の説明、もしくは、説明不要なほどに明らかなコンセンサスが不可欠です。そういうものが全然ない今の状況は単なる迷走にしか見えず、ようわからんから適当でええわ、なんて人も出てきかねません。会見で聞かされ続ける「いま一生懸命やってる」「早急に取り組む」も、「今、向かってます」と言いつついつまでも来ない「蕎麦屋の出前」かっつうの。
 

 

東京五輪まであと1年。勇気と希望だけを掲げて突き進むのか


そんな中で7月23日に行われた「東京五輪1年前イベント」は、白血病で闘病していた池江璃花子選手を駆り出してドラマチックに演出し、「希望」という言葉を散りばめて、今度はオリンピックに突き進むのか……と、暗澹たる気持ちになりました。

そもそもコロナ対策がこんなにグダグダな中、当初の計画を全部作り直すレベルの変更を着地させることが可能なのか。選手を含め外国から来る人たち全員にPCR検査(それすら現時点では怪しいですが)をすればそれでOKとはいきません。入国した選手が東京の町で感染したら?しないよう宿舎に閉じ込めますか?宿舎も練習する場所も、それなりにコロナ対策が必要になります。彼らの食事はどうしましょう。いくら全員陰性でも、食堂でビュッフェはできませんよね。宿舎を運営する人たちやボランティアの全員検査は当然でしょうが、期間中に彼らが外で感染したら?そうならないように、彼らも宿舎にカンヅメにしますか?真夏の開催ですが、選手はマスク着用?マラソンも?柔道も?バスケも?サッカーも?競技の前、その度にPCR検査するなら、1日の検査のキャパシティはどのくらいに?期間中は大会関係者以外の検査が追いつかない、という状況も困りますよね。

でもそれ以前に「東京では選手の安全が保てない」と考える国、「オリンピックどころじゃない」という国もあるかも知れません。もちろんワクチン開発が順調に行けばいいけれど、開催するかしないかを決定するタイミングで、まだできていなければ?それでもその可能性にかけ、不退転の決意で「見切り発車」するんでしょうか。

もちろん人間はいつだって夢や希望がほしい。でもそこにたどり着くための具体的な方策や道筋がある程度見えていなければ、希望は絶望の種にしかなりません。希望を持つためにも、まずはコロナ抑え込みに真剣に取り組んでもらいたいものです。不退転の決意で。
 

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