実在の奴隷解放運動家の人生を描いた映画『ハリエット』。© Universal Pictures
史上初めて有色人種の女性が副大統領候補に
次の大統領選の民主党副大統領候補に、カマラ・ハリスが指名されました。ハリス候補は女性で、母はインド人、父はジャマイカ人。有色人種の女性が副大統領候補になったのは、史上初めてのことです。
しかし、これは決して驚きではありません。ジョー・バイデン民主党大統領候補は、早くから副大統領候補に「女性を選ぶ」と言ってきています。そこへきて5月末に警察によるジョージ・フロイド氏の殺人事件があり、「#Black Lives Matter」運動が盛り上がると、民主党内から「黒人女性」を選ぶべきだとの声が強まったのでした。以後は黒人女性の名前が多数挙げられては、「この中の誰になるのか」と論議されてきたのです。それでも、これがエキサイティングな出来事であることに変わりはありません。
「黒人だから」「女性だから」で選ぶことへの否定的意見
もちろん、世の中の全員がそう感じているわけではないでしょう。実際、日本のニュースのコメント欄には、「黒人だから」「女性だから」という理由で決めるのは違うのではないかという意見が見られました。その条件を優先することで、本当にふさわしい人が選ばれないのではないかというのです。その懸念は、決して間違ってはいません。しかし、残念ながら社会が平等でない以上、そういった条件をもうけるのは、とても重要なことなのです。ひとつの国はいろいろな人々で成り立っているのに、いつも決まった人(アメリカの場合は白人の男性)がトップに立つと、正しい形でみんなの声が反映されないからです。
白人男性が圧倒的優位だったハリウッドにも変化が
それは、近年、ハリウッドで起きている、女性監督をもっと起用しようという運動にもつながっています。アメリカ映画の監督も、政治と同じで、圧倒的に白人男性が占めてきました。一見、時代の先を行くように見える業界で、しかも政治的にはリベラル派なのに、まったくの矛盾です。
その事実は、どんな映画が作られるのか、またどんな映画になるのかにおいて、長年にわたり、大きな影響を与えてきました。たとえば、スタジオのトップ、プロデューサー、監督がみんな白人の中年、または高齢男性だと、主演俳優が50代なのにお相手の女性が20代ということが、往々にして起きてしまいます。もちろん、どちらも白人。それが彼らの見たい映画だからです。自分と同じような男が活躍するのを見たいし、自分の歳でもまだ若い美女に相手にされると信じたいのです。同じ映画を女性が作ったら、そんなことにはなりません。そのヒロイン像も、見た目だけが売りの薄っぺらいキャラクターでなく、必ずしも美人でないし欠点もある、女性観客が共感できるものになるはずです。
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