② 数百円の竹の盛り付け箸


まな板と同様、小さくしたキッチンには少数精鋭で本当に頼れる道具だけが残りました。
たとえば、盛り付け箸。
料理中、私は菜箸ではなく、盛り付け箸を使っています。これを使うようになって、もう40年くらいになるでしょうか。料理の最後の盛り付けに使う箸なので先端が細くなっていて、とても便利です。反対側はヘラのように平たくなっているので柔らかいものや薄いものもつかめます。私はこれを盛り付けだけではなく、炒めもの、煮物など料理中にも菜箸がわりに使っています。

 

市販の菜箸は、長かったり太かったりするものが多く、自分の手に合うものがなかなか見つかりませんでしたが、この箸は長さも軽さもちょうどいいのです。どんなものでも確実につかめますからとても信頼していて、今はこれだけになりました。
素材は竹で、一辺は竹皮を残してあるので、長く使い続けても曲がりません。ただし、塊の肉、たとえば焼豚などの重いものをつかむときは箸ではなくトングです。

盛り付け箸ですから、もちろん盛り付けにも使っています。料理は最後のひと手間を大事にするとますます美味しそうに見えるのです。煮物や和えものなども中央が高くなるように盛り付けると素材が引き立ちます。

私はいつも築地の調理道具店で買いますが、調理道具を扱う店ならたいてい数百円で置いてあり、インターネット通販などでも見かけますから誰でも気軽に購入できます。まとめ買いをして古くなってきたものはどんどん新しいものに取りかえます。
ちょっとしたお礼などで、知り合いにプレゼントしてもとてもよろこばれる逸品です。

 


③ 切れ味のいいドイツのピーラーとスライサー


野菜の下準備に重宝するのが、ピーラーとスライサーです。
にんじんやじゃがいもの皮をむくピーラーは、ドイツのリッター社のものをかれこれ40年近く使っています。ずっと変わらない形で軽くて使いやすく、世界的なロングセラーです。刃が自由に動いて角度が変わるので、じゃがいもみたいに凸凹があるものでも滑らかに皮をむくことができます。これからもずっと使い続けたい製品です。

 

スライサーは買い換えたばかりで、おろし金もセットでついているものにしました。「先生もスライサーを使うのですか?」と聞かれますが、野菜をたくさんせん切りにするときにはもちろん使います。このほうが楽ですから。このスライサーは切れ味がよく、底面にストッパーがついているから安定感があって気に入っています。

調理道具は、すぐには壊れませんし、一度買ったらずっと使い続けることが多いもの。それほど使いやすくなくても、なんとなく我慢してしまう。
だけどピーラーもスライサーも古くなってくれば刃の切れ味がにぶります。家の中には、意外とそういうものが多いのです。使いにくい道具は潔く買い換えています。

使いやすい調理道具があると、それだけで料理がはかどります。いい道具を手に入れると、驚くほど気分よく料理ができるのです。

 

『60過ぎたらコンパクトに暮らす』
著 藤野嘉子 講談社

60歳という節目に暮らしを思い切り小さくした著者の、自分らしい日常の選び方やお金の使い方、楽しい時間の過ごし方とは。気持ちが軽くなる衣食住を軽快なエッセイと写真で紹介。いつでも自分の人生を楽しくするヒントが満載の一冊です。


文/庄山陽子
構成/片岡千晶(編集部)

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