仕事や家事など毎日の雑務に追われて、気づけば家の中はモノであふれ、もはやどこから片づけたらいいのかさえ分からない……いっそのこと、きれいさっぱりリセットしたい!と思ったことはありませんか?
藤野嘉子さんの新刊『60過ぎたらコンパクトに暮らす』では、著者自身が家もモノも手放すだけでなく、仕事も思い切りシンプルにするなど、突き抜けたやり方を紹介しています。

60歳を前に、25年間家族で住み続けた150㎡の自宅を思い切って売却し、2LDK65㎡の賃貸に引っ越す。そう聞くだけでも勇気がいりそうですが、家具やモノも必要最小限にしてしまうなど、そのさっぱりとした生き方が反響を呼んでいます。
シェフである夫と料理研究家の著者、著者の母との3人暮らしという今の家族構成に合った間取りとして、選んだのはこちら。

現在の賃貸の間取り。コンパクトながら使い勝手がよく気に入っているそう。

実際、どのように住まいをコンパクトにしたのでしょうか?

 

長年住み続けた自宅を手放してみるという選択


住み替えの提案を最初にしたのは著者の夫。
これまでのマンションに住み続けていれば、月々にかかる費用はローンのほか、管理費や修繕積立金、駐車場代だけではありません。毎年、固定資産税も払い、ゆくゆくはリフォームも必要になります。売却すればいくらかの売却益が出ますから、それを老後資金と考えることにしたのです。この決断によって、3人の暮らしはがらりと変わりました。

家具も祖母から受け継いだものをはじめ、広い自宅でもギュウギュウの状態だったため、転居を機に思い切って必要最少限に。車も持ち物も処分。最初はこんなに減らして大丈夫かしらと心配しつつ、引っ越しから3年が経って、今はちょうどいいと思う暮らし方ができるようになってきたそうです。
60歳での大胆な選択は、たくさんの気づきをもたらしてくれました。

 


年齢とともに変化する「モノ」「コト」の基準


「暮らしを思い切りコンパクトにしてみたことで、自分にとって本当に必要な『モノ』や『コト』がわかるようになってきたのがいちばんの変化」と藤野さんは言います。
60代になった今は、大きなことをやろうとするより、小さなことを少しずつやっていけばいい。重くて立派なものより、軽くて使いやすいものがいい。人や仕事に対しても、ものに対しても、付き合い方がずいぶんと変わってきたそう。

大切なのは、どう暮らすか。
引っ越しをした当初は、ものを買うことにはとても慎重になっていました。「買う」の向こうに「捨てる」があると知って、ものを買うことに対して臆病になったのです。
だけど、私が目指しているのは「心ゆたかに暮らすこと」であって、「ものを減らすこと」ではありません。買わないこと、ものを減らすことにだけ縛られてしまうと楽しくありませんでした。新しいものを手に入れることでのよろこびもあります。


そこで、これまでのように衝動的に何かを買い求めたりすることは慎みつつ、自分が必要だと思ったものは、じっくり考えて買い、買ったらとことん使い切ると決めています。そもそも、暮らしをコンパクトにしたらムダなものは買わなくなりました。
自分にとってちょうどいい空間と好きなものに囲まれて、気持ちよく過ごしています。

(『60過ぎたらコンパクトに暮らす』より)

次回、藤野さんに手元に残したアイテムとその理由を伺います。

『60過ぎたらコンパクトに暮らす』
著 藤野嘉子 講談社

60歳という節目に暮らしを思い切り小さくした著者の、自分らしい日常の選び方やお金の使い方、楽しい時間の過ごし方とは。気持ちが軽くなる衣食住を軽快なエッセイと写真で紹介。いつでも自分の人生を楽しくするヒントが満載の一冊です。


文/庄山陽子
構成/片岡千晶(編集部)