「ウィズコロナの時代」という単語を耳にするようになってしばらく経ちました。気をつけるべきところは対策をしっかりとって日常生活を送ることには慣れたかもしれませんが、こと妊娠・出産となると話は変わってきます。
子づくりを考えていた方でも、感染症への警戒から一歩を踏み出せずにいる方も多いかもしれません。そんなコロナ時代の妊娠・出産について、産婦人科医の宋美玄先生が『産婦人科医が伝えたいコロナ時代の妊娠と出産』で多くの指針を示してくれていました。
今、妊婦さんや出産を考える方がなにを気をつけるべきか。子作りのタイミングから宋美玄先生が教えてくれます。

※記載の情報は2020年6月時点のものです。
 
産婦人科医の宋美玄先生


妊活どうする? 待つのか、産むのか 


これから妊娠を考えていたのに、新型コロナウイルスの流行のせいで計画が狂わされたという方はたくさんいると思います。
現在のところ、(何度も聞いたかもしれませんが)新型コロナウイルスに関しては、妊婦だから特別に感染しやすかったり重症化したりするという確固たるデータはありません。母から胎児への感染を疑う報告もわずかで、ウイルスのせいで流産や死産が引き起こされたと明らかに考えられる例もありません。 
世界保健機関(WHO)も厚生労働省も、過剰に心配しすぎず、ほかの人と同じように予防対策をしていくことを推奨しています。

 

そんなふうに言われても、まだ症例が少なくて、感染症にかかったときの胎児への影響が完全にはわかっていないことや、ウイルスの流行拡大時には面会や立ち会い出産ができなくなることへの不安から、妊活を延期している人もいると思います。経済的な先行きが見えづらくなっているのも、妊娠を控える要因になっているでしょう。
少しでも良い環境で子どもを産んで育てたいと願うのは自然なことです。
もし、近い未来に新型コロナウイルスの流行が終息するのなら、その時期がわかってからライフプランを立てたいと誰もが思うことでしょう。

 

もう少し時が経てば、ワクチンの開発状況やウイルスの流行の動向も今よりは見えてくるかもしれないので、もし、妊娠を望んでいる妊婦さんが現在35歳以下で、将来もちたい子どもの数に影響がなさそうであれば、しばらく様子を見て先が見通せるようになってから考えるという選択肢もあるでしょう。

しかし、30代後半から40代前半のアラフォーと呼ばれる年代の方々に関しては、何も考えずに1年待つと選択肢が狭まってしまいます。年齢とともに自然妊娠はしにくくなります。また、受精卵が着床しても育ち続けられずに流れてしまう確率は高まります。このため、35歳で約2割、40歳で約4割、42歳で約半分が流産に至ります。
さらに、年齢と妊娠の関係は、女性だけの問題ではありません。男性の年齢も関係してきます。男女ともにタイムリミットがあるのです。
これは初めての妊娠に限った話ではありません。2人目、3人目の妊娠に対しても体のタイムリミットは適用されます。1人目さえ早く産めば大丈夫というものではなくて、子どもを産もうが産むまいが、卵子は平等に歳を取っていきますし、精子を作る力も衰えていきます。

ウイルスの流行は待っていたら自然におさまるというものでもなく、ワクチンが開発されなければ、これから先、もしかしたらこの4、5月よりもひどい流行状況が訪れる可能性はゼロではありません。
いったいこの先どうなるのでしょう。
ウイルスの流行の状況に振り回されて、ずっと心が落ち着かないというのもなんだか悔しいですよね。
いっそのこと、先手を打って、コロナ時代の妊娠・出産を考えてみませんか?