ファストファッションや使い捨ての便利さも充分知っているけれど、「本当にいいもの、手放せなくなるほど大好きなものだけに囲まれた暮らし」に憧れる人も多いのでは?
料理研究家の藤野嘉子さんの書籍『60過ぎたらコンパクトに暮らす』では、著者自身が自宅の広さを半分に、暮らしをコンパクトにしたことでわかった、モノとの新しい向き合い方が多く紹介されています。

そのなかから厳選し、手元に残ったモノとその理由を伺いました。

 


① 時間をかけて手に入れた「10年使いたい皮財布」


今使っている財布は、南青山の仕事場に向かう途中にあるスパイラルマーケットのショップで見つけた、RHYTHMOS(リュトモス)というアトリエの革財布です。財布を買い換えたいと思っていたときに、ちょうど目についたものです。

鹿児島で皮革製品を扱うアトリエRHYTHMOS 。デザインから縫製まですべて自分たちの手で行っています。

もっと若いころは、仕事も家事も忙しく、じっくり選んでいる時間がありませんでした。いつも何かに追われていて、買うなら今しかない、次はいつ買いにこられるかがわからない、と急かされるように買うこともありましたし、それほど必要ではないものを、衝動的に買ってしまうこともあったのです。テレビの通販チャンネルやインターネット通販で、よく確かめもせず買って失敗したこともありました。

だけど今は、本当に必要なもの、本当に自分が気に入ったものをゆっくり選ぶようにしています。途中で使いにくく感じたり、なんとなく飽きてきたりして、2、3年で買い換えるより、買ったものをできるだけ大切に、長く使いたい。
この財布も、サイズも手触りもとてもよかったのですが、本当にこれがいいのか、すぐに飛びついたりせず、時間をかけて考えました。

メーカーのサイトをチェックしてみたら、どんな人たちがどんな想いで作っているかがよくわかりました。この人たちが作ったものなら、ずっと使えるだろうと信頼して、買うことに決めました。

素材は牛革で、張りも厚みも私にはちょうどいい。ジッパーがついていて開け閉めはとても滑らか。お札やコインを取り出しやすく、詰め込んでもみっともないようなふくらみ方はしません。色合いも気に入っています。革製品ですから、きっと使っていくうちに飴色に変わっていくでしょう。それも楽しみです。
私なりにじっくり考えて選んだ財布。これから、ずっと長く使い続けたいと思っています。

 
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