タイ移住4ヶ月目。仕事の為に一時帰国し、実家で母と久しぶりに母と対面するも、まともな会話はなく……。不和の原因は数年に及んだ婚活中に母から言われた厳しい言葉にありました。結婚して欲しい母と、結婚したいけど一般的な結婚観に納得がいかない私。

 

私が社会に出た2000年初頭は、仕事についてだけではなく社会全体での男女平等への取り組みがようやく始まった頃で、私はもちろん周囲の女友達も皆、キャリアを積み自立した女性として生きることに憧れを抱いていました。

その頃は母も「せっかくやりたいことを学んだのだから、あまり急いで結婚せずに、色んな経験をしなさいね。」と私に言ってくれていました。

ですが、20代半ばに差し掛かった頃だったでしょうか、「負け犬の遠吠え」という本が出版され、あらゆるメディアや人々が30代独身女性を負け犬と呼び、気軽に笑い者にし始めたのです。

その言葉を聞いた瞬間、20代で結婚する気なんてサラサラ無かった私の未来は、一瞬にして真っ黒に塗りつぶされたような衝撃を受けました。母も私を「負け犬」なんかにさせたくなかったのでしょう。その頃から結婚を急かすようになってきました。

一緒にキャリアアップを目指していたはずの友人達は皆、見事に30歳でサーっと結婚していき、気がつけばポツンとひとり、私だけ独身でした。

そして「負け犬の遠吠え」に描かれていた悲惨な世界が現実だと身を持って知ることとなったのです。

あれからもう10数年が経ちます。30代独身女性に当たる風は、ちょっとはマシになっているのでしょうか。もしも、私と似たような辛い思いをしている誰かがいたら、長いトンネルのその先にちゃんと光があることを伝えたい。そんな思いで漫画を描いています。
 

 

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文・漫画/久保木亜紀