コロナ禍では、体の不調が起きたら「まずはかかりつけ医に相談を」というフレーズをよく耳にしましたが、めまいの場合はどうなのでしょうか? 耳鼻咽喉科専門医の前田陽平先生によると、めまい以外に主だった症状がなければ「まずは耳鼻科へ」といいます。診察や治療がイメージしにくいめまいについて、耳鼻科を受診すべきそのわけを教えていただきました。
めまいなのになんで耳鼻科なの?
この質問は私も病院で聞かれることが多いんですが、さまざまなめまいの症状がある中で、およそ60%が“耳の異常”が原因と言われているからなんです。耳には三半規管や前庭など体のバランスをとる上で重要な器官がありますから、めまいを自覚したらまずは耳鼻科を受診していただくのがいいと思いますね。
耳が原因のめまいは“グルグルまわる”ようなめまいが多く、感覚としては船に乗っているような状態が続くので、気持ち悪くなって吐いてしまうこともあります。「内科じゃなくていいの?」と心配になるかもしれませんが、以下の症状の範囲でおさまっているなら、まずは耳鼻科に来ていただければ大丈夫ですよ。
① めまい
②(めまいに伴う)吐き気
③(めまいに伴う)難聴
とはいっても、耳からくるめまいは強い症状が出ることも少なくありません。原因は耳なので命には関わりませんが、症状がきつすぎて救急車を呼ぶ方もいらっしゃるほどです。夜間の救急は内科の先生が対応するケースが多いのですが、CT検査などで脳に異常がなければ“耳からくる末梢性めまい”の可能性を考えるので、先生に「明日また耳鼻科に行ってくださいね」と言われることが多いと思います。
逆に、これらの範囲以外の症状があるなら、脳外科など緊急で脳の検査が行える施設に受診する方が良いと思います。
心配なのは、脳からくる病気です。失神した、腕に力が入らない、ろれつがまわらないなどの症状を伴う場合は、まずは脳の検査を受ける必要があります。ある時突然これらの症状がはっきりと現れたような場合は「脳梗塞」など急を要する場合もありますから、すぐに救急車を呼ぶことも考慮してください。
耳鼻科ではどんな診察をするの?
耳鼻科の診察で初めに聞くのは、「めまいは具体的にはどういう症状ですか?」という質問です。めまいは意味が広くて曖昧なぶん医師にとってもわかりにくいところがあるので、まずは患者さんと会話しながら、少しずつ探っていく診察が一般的かと思います。その後、耳の中を見て、聴力検査、眼振検査(目の動きを見る検査)、平衡機能検査などを行う流れになります。
どのくらい小さな音まで聞こえるかを測る聴力検査は、健康診断でご存知の方も多いかもしれませんね。耳鼻科のめまいの診察では、この聴力検査をとても重視しています。難聴を伴うめまいは「メニエール病」など何らかの治療を必要とする可能性が高く、後遺症につながる場合があるからなんです。逆に難聴を伴わないめまいなら、あまり深刻な状態ではないと考えることもありますね。
眼振検査は、異常な目の動きが出ていないか見る検査です。「なぜ耳鼻科で目の検査を?」と不思議に思われるかもしれませんが、耳が原因のめまいはグルグルと目がまわった状態になるので、体は動かしていないのに眼球だけ激しく動いていることがあるからです。
平衡機能検査にはいろいろあって、機械の上に立って体重のかかり方やバランスを測るような検査の他、原始的な方法ですが目をつぶって片足立ちをしてもらい、どの程度ぐらつくかを診る検査なんかもあります。どのような平衡機能検査が行うかは、病院や先生、問診の結果によりますね。
取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵
【全6回】
第一回「視界がグルグル…これってどんな病気? 医師が解説する「めまい」の正体とは」>>
第三回「女性に「めまい」が多いのはなぜ?原因と治療法を耳鼻科医が解説」
第四回「「めまい」に潜む怖い病気と対処法。この症状には要注意!」
第五回「お医者さんへの説明が苦手な人必見! 耳鼻科医が教える「めまい相談術」」
第六回「医師が教えるめまいの予防・改善法。症状を繰り返す人に多い生活習慣とは」
前田陽平 Yohei Maeda
大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科。耳鼻咽喉科専門医・指導医・医学博士。アレルギー学会認定専門医・指導医。Twitterでも耳鼻科や医療関連の情報を発信している。
【Twitter】ひまみみ 耳鼻科 前田陽平(@ent_univ_)