更年期の女性にめまいが多いのはなぜ?原因と治療法を耳鼻科医が解説_img0
 

めまいが気になり耳鼻科へ行くことを決意するも、心配なのは治療内容や期間、そしてかかる費用のこと。風邪を引いた時のように、診察は1回で処方箋をもらうと大体いくら、というシミュレーションがしづらいのも、めまいで病院へ行くのをためらう理由のひとつかもしれません。まためまいはとくに女性に多いと言われますが、これは一体なぜなのでしょうか。今回は、知っておくとちょっと安心なめまいの治療に関するあれこれを、耳鼻咽喉科専門医の前田陽平先生にお聞きしました。

 


めまいはどういうタイミングで受診すべき?


耳が原因の場合は、めまい・吐き気・難聴以外の症状が出ることはほとんどありません。このような耳が原因の場合は命にかかわるケースはとても少ないとはいえ、明らかなめまいを自覚しているのであれば、なるべく早めに耳鼻科にいらしていただくのがいいですね。


めまいの治療について知りたい!


めまいの治療は病気の種類によって変わります。例えば、良性発作性頭位めまい症であればエプリー法といわれる理学療法であったり、突発性難聴によるメニエール病であったらお薬だったりします。リハビリの有効性もさまざまな研究で指摘されていますね。

めまいで全く動けないようであれば入院になることもあります。特別の治療をするというよりは、動けるようになるまでは入院していましょう、という場合も多いですね。


治療期間と費用はどのくらいかかる?

更年期の女性にめまいが多いのはなぜ?原因と治療法を耳鼻科医が解説_img1
 

これもめまいの原因によってさまざまですね。先ほど申し上げた、高齢女性に多い良性発作性頭位めまい症などは症状がおさまるまで1〜2週間程度が目安です。メニエール病のめまいなら数時間、前庭神経炎のめまいなら数日程度が典型的です。しかし、メニエール病はめまい発作を繰り返すこともあり、その治療は長くなると年単位になります。私が患者さんにお伝えする時には、「一般的には1ヵ月はかからないと思いますよ」といった感じで、目安となる期間を申し上げるようにしていますね。


ただ、症状が思いのほか長引いたり、一度おさまってもまた繰り返してしまう方もいます。たとえばメニエール病なら、そもそも病気の性質として繰り返してしまいます。良性発作性頭位めまい症なら、女性ホルモンと耳石の代謝の関係から、繰り返す方には高齢女性が多いというのもよく言われていることですね。


めまいは女性に多いって本当?


過去のめまいに関する統計でも、女性が多かったとする報告は数多くみられますね。耳鼻咽喉科を受診するめまいでもっとも多い「良性発作性頭位めまい症」は高齢女性がかかりやすいめまいですから、そうしたことも“めまいは女性に多い”と言われる原因になっているのだと思います。

更年期の女性にめまいが多いのはなぜ?原因と治療法を耳鼻科医が解説_img2
 

良性発作性頭位めまい症は末梢性めまいのひとつで、内耳にある三半規管の一時的な異常によって起こるめまいです。三半規管はリンパ液という液体で満たされていて、リンパ液やその中にある“毛”のような細胞が動くことで体の動きを監視していますが、この液体の中に耳石(じせき)と呼ばれる石のようなものが迷い込んでしまい、めまいが起こるんです。

通称で「耳石症」と呼ばれたりもしますが、この耳石の代謝には骨やカルシウムを作る女性ホルモン「エストロゲン」が関与しているので、エストロゲンの分泌量が低下する高齢女性は、どうしても良性発作性頭位めまい症になりやすい傾向がありますね。

アイコン画像

前田陽平 Yohei Maeda

大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科。耳鼻咽喉科専門医・指導医・医学博士。アレルギー学会認定専門医・指導医。Twitterでも耳鼻科や医療関連の情報を発信している。
【Twitter】ひまみみ 耳鼻科 前田陽平(@ent_univ_)


取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵

 

【全6回】
第一回「視界がグルグル…これってどんな病気? 医師が解説する「めまい」の正体とは」
第二回「めまいの原因の6割は「耳」!医師が教える症状が出た時の注意点」
第四回「「めまい」に潜む怖い病気と対処法。この症状には要注意!」
第五回「お医者さんへの説明が苦手な人必見! 耳鼻科医が教える「めまい相談術」」
第六回「医師が教えるめまいの予防・改善法。症状を繰り返す人に多い生活習慣とは」