わかりやすい痛みや目立った変化が少ないめまい。病院で「自分の症状をうまく説明できるかな……」と不安になるのも当然のことです。耳鼻科の先生と上手にコミュニケーションをとるにはどうしたらいいのでしょうか? そのヒントを、耳鼻咽喉科専門医の前田陽平先生に教えていただきます。めまい改善のために市販薬や漢方を試してみたいという方も、ぜひ参考にしてみてください。
めまいは曖昧な症状だから、うまく説明できるか不安…
いつ、何をしている時にどんな症状が起きたか、どれくらい続いたか、自分のめまいについて伝えたいこと、聞きたいことをメモなどに箇条書きで書いて、それを元に話したり、耳鼻科の先生にメモを見せるなどするといいと思います。
病院ではすごくよくある光景なんですが、めまいの患者さんに「来週も来てくださいね。だいぶよくなっていると思いますから、またお薬の効きとかみましょうね」と伝えるじゃないですか。翌週来院されて「めまいはどうですか?」と聞くと、「最近咳がひどくって〜」という話から始まってしまう(笑)。医師を前にするとつい、他の不調も伝えたくなってしまう気持ちはとてもよくわかります。ただ、医師に質問されているときは、まずは質問に答えて、その後に他に気になることを話すようにすると診察がスムーズになって、結局は手厚い診察を受けられることになりますね。
自分のめまいについて質問を事前に整理しておいて、診察時に先生に簡単に答えてもらう。そんなメモ活用法は忙しい先生の時間をうまく使うと同時に、知りたいことがわかって自分も得をする方法のひとつだと思います。
また、日本めまい平衡医学会の認定する「めまい相談医」という資格を持つ先生もいらっしゃるので、めまいの症状で苦労されている方は一度調べて受診してもよいかもしれません。
市販薬でもめまいを治すことはできる?
個人的には、めまいの場合はまずは医院・病院での診察を受けることをおすすめしています。市販薬の中には病院で使われるものと同じような成分を含むものもありますが、それが妥当かどうかを判断することは、医師の診察がないと難しいからです。
耳鼻科のめまい止めで使うような市販薬は、例えば乗り物の酔い止め薬などがそうですね。乗り物酔いは「動揺病」というめまい専門医の研究対象とされる病気で、ちょっと乱暴な説明ですが一種のめまいみたいなものなんです。自分は動いていないのに周りの景色が動いていることで、バランスのセンサーが狂ってしまうんです。気持ち悪くなって吐いてしまうところも、内耳によるめまいとよく似ていますよね。
また、私もそうですが、めまいには“漢方”を処方する先生も結構いらっしゃると思います。もちろん漢方も診察をしてみないと妥当かどうかの判断が難しいので、市販薬や漢方で飲んでみたいものがある場合は先生に相談してみてください。手元に箱がある場合は持ってきていただいてもいいですし、新聞の切り抜きを持って相談にこられる方もいます。
「そんなことを聞いて先生は気分を害さない?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、質問で医師が怒るということはあまりないと思います。質問することが心理的にやりにくいと感じるのなら、自分にとってコミュニケーションの取りやすい先生のところを受診するように変える、という手もあるかもしれませんね。
取材・文/金澤英恵
イラスト/徳丸ゆう
構成/山崎恵
【全6回】
第一回「視界がグルグル…これってどんな病気? 医師が解説する「めまい」の正体とは」>>
第二回「めまいの原因の6割は「耳」!医師が教える症状が出た時の注意点」>>
第三回「更年期の女性にめまいが多いのはなぜ?原因と治療法を耳鼻科医が解説」>>
第四回「「めまい」に潜む怖い病気と対処法。この症状には要注意!」
第六回「医師が教えるめまいの予防・改善法。症状を繰り返す人に多い生活習慣とは」
前田陽平 Yohei Maeda
大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科。耳鼻咽喉科専門医・指導医・医学博士。アレルギー学会認定専門医・指導医。Twitterでも耳鼻科や医療関連の情報を発信している。
【Twitter】ひまみみ 耳鼻科 前田陽平(@ent_univ_)