森下 見た目の問題ももちろんですが、虫歯ができやすい、歯周病に悩んできたなど、50代になってから矯正を考える方は皆さん、歯で苦労されたてきた経験がおありなんですよね。
そんな状況で今後の長い人生を考えたとき、歯のトラブルを極力なくしたい、予防的な価値があるならやりたいと考える方が多いんです。
矯正に年齢制限なし!
実際、「歯根膜(しこんまく)」という組織が健康であれば、何歳でも矯正は可能です。それに、歯並びが良くなると歯周病が改善するケースが多いです。というのも、ガタガタで磨きにくかった部分にも歯ブラシが当たりやすくなり、プラーク(歯周病の元になる歯垢)がつきにくくなるからです。
ただし、歯周病が進行状態にある方や糖尿病、骨粗しょう症の方は注意が必要ですので、矯正医と話し合って進めていただけたらと思います。
子どもはいつから矯正を考えるべき?
ただ、やはり大人と子どもとでは歯の動くスピードに大きな差があります。そのため、大人の矯正は治療期間が長くなる傾向にあります。また、何十年とその噛み合わせで生活をしてきた大人が、歯並びを変えて一から噛み合わせを再構築していくのはわりと大変なことでもあります。
一方で、子どもの場合は噛み合わせが作られ定着する段階での治療であることから、矯正した噛み合わせに違和感を感じることなくスムーズに受け入れてくれます。
また、爪噛み、口呼吸といった子どもの頃の悪習癖は歯並びにダイレクトに悪い影響を与えます。そうした悪習癖をいち早く発見して取り除き、いい歯並びへと導くためにも、お子さんの歯並びを考える場合には小学校入学くらいの時期に一度、矯正の専門医にかかることをおすすめします。
――そう考えると歯医者さんは、本当に生涯を共にするかかりつけ医ですね。では、いい歯医者はどのようにして選べばいいでしょうか?
森下 コンビニにより多いと言われるほど歯科医が過剰になっているので、もしかするとご近所にも歯科医院が林立しているかもしれませんね……。
そんな中、業界では歯科衛生士の不足が問題になっているため、「腕のいい歯科衛生士がいるかどうか」は、クリニックを見るひとつの指標になると思います。
腕のいい歯科衛生士を見つけるべし!
歯科衛生士の仕事は主にクリーニングと、歯磨き習慣などを診てくれる口腔衛生指導になってくるのですが、特に後者は、歯科衛生士の知識や経験が物を言う部分です。
たとえば虫歯ができた場合、食事が原因だとしたら食べているものに原因があるのか、または食事をとるタイミングの問題なのかなどが考えられます。もしくは、そもそも磨き方に問題があり、歯磨き粉や歯ブラシのチョイスが合っていないのかもしれません。または、更年期といった年齢の問題で唾液の分泌量が減っているのかもしれない。
このように虫歯ひとつでもいろんな角度でアプローチをし、一緒に問題を突き止めて解決してくれるような歯科衛生士さんは、間違いなく腕のいい、信頼の置ける方ではないでしょうか。
最近では予防に特化したクリニックも増えていますが、歯の病気は、予防すれば必ず防げるものがほとんどです。単純にクリーニングして終わりではなく、そのクリニックでプラスαのなにかを得られる。そんな歯医者さんを選んでいただけたらいいと思いますね。
『東京医科歯科大学を首席卒業した名医が教える 世界の一流はなぜ歯に気をつかうのか 科学的に正しい歯のケア方法』
著者:森下真紀 ダイヤモンド社 1760円
「歯」と「口臭予防」に投資を惜しまず、ケアをかかさない欧米のエリートたち。東京医科歯科大学を首席で卒業した歯学博士の森下真紀さんが、英国に留学した際に改めて感じた日本人の歯に対する意識の低さから、歯に関する予防・治療の正しい知識を啓蒙してくれる一冊です。
構成/小泉なつみ
第1回「【歯学博士に聞く】一目でわかる、女性に多い「口臭」の原因とは 」>>
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