高齢者の交通事故のニュースをよく耳にする昨今。高齢の両親に運転免許を返納させたいと考えている人は多いのではないでしょうか。大ヒット本『ストレスフリー超大全』の著者で、YouTube動画『樺チャンネル』も大人気の精神科医・樺沢紫苑先生が、その伝え方のコツを教えてくれました。

 


naobeeさんからの質問

Q. 高齢の両親に運転免許を返納させたい。どう言えば耳を貸してくれるのでしょうか?


両親も高齢となりました。田舎のため、どうしても車がないと移動もできず、80代と70代の両親も運転をしています。ともに運転歴は長く、過去に事故歴もありませんが、年齢による衰えは否めないと感じています。先日も帰省の際に免許の返納のことを言いましたが、彼らも頭では分かっていても、どこかで自分は大丈夫と思っている節があり、次の免許の更新のときには、とごまかします。私は遠方に住んでいるため、運転手になってあげることもできません。近年の高齢者による事故、それも人身事故が多発している中、なんとか免許返納をしてほしいと思うのですが、どう言えば伝わるでしょうか。何かあってからでは遅いので、少しでも早く決断を促したい思いです。お知恵をいただければ幸いです。(51歳)

精神科医・樺沢紫苑先生の回答

A. 人は「〇〇しなさい」と言われるとしない。“情報提供”だけにとどめてください。


私は、他人を変えようとすることは基本的にお勧めしていません。他人を変えることは大変難しく、思うようにいかなくてものすごいストレスになるだけでなく、キリがないからでもあります。仮にご両親に免許を返納させることができたとしても、今度は「体調が悪いそうだから病院に行かせたい」など、次々と新しいことが気になり始めるでしょう。ご両親は大人なのですから、もっと敬意を払ってあげることが大事だと思います。自分の意のままに動かそうとすることは、言葉はきついですが、私はやや高慢な行為だと思うのです。

それでも心配でたまらないようでしたら、「情報提供」だけおこなうのが良いでしょう。高齢者の事故や免許返納に関して「こういう情報があるよ」と伝える。これが、人を変えたいと思ったときの基本スタンスです。そのうえで、「免許を返納しなさい」と言ってはいけません。なぜなら人は「〇〇しなさい」と言われたらしたくなくなるものです。人から言われておこなう、というのは誰だって嫌いなのです。「返納しなさい」と言われたら、ご両親は返納を考え始めていたとしても、かえってやりたくなくなってしまうことでしょう。

ですから、とにかく情報提供のみにとどめること。そしてその後は、待つことも大事です。私もメンタル不調を抱える患者さんに、「改善効果があるから」と“朝散歩”をお勧めするのですが、皆さん、まずやろうとはしません。ですが、おそらく効果があるだろう、ということは分かっているのでしょう。半年ぐらい経ってみると、しれっと始めている方が多いのです(笑)。人に何かをさせようと思ったら、提案してから早くて3ヵ月はかかるものです。だいたいは6カ月ぐらい、さりげなく言い続けないと無理でしょう。ですからnaobeeさんも、情報提供という形でご両親に伝え続けてください。すると忘れた頃に、免許を返納してくれるのではないかと思います。

人を変えようと思ったら、気長な戦略で臨む必要があります。ですが皆さん、大抵2,3回トライしてやめてしまうのですよ。そうではなく20回も30回も、そしてさりげなく、情報提供し続けることが必要です。本気で免許を返納してもらいたいと思っているのなら、1年ぐらいはそのようにアプローチし続けてみてください。
 

PROFILE
 取材・文/山本奈緒子

 

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