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STMさんからの質問
Q.
子供を持てないかもしれない、という不安にどう向き合えばいい……?

友達にはちょっと相談しづらいお悩みまでをもお答えいただけるとのことで、質問させていただきます。
40少し手前の年齢です。夫婦2人で生きていく予定でしたが、友人の出産に感動と憧れを持ち、ふと自分の人生を見直してみた時に、子供を持つ事も考え始めました。
ですが初産では、ラストチャンスの年齢かと思っています。自分の身体を見直してみたいと思い婦人科に行った際、「子供が出来にくいかも」と言われました。子供を持ちたいと思い始めた矢先、つまずいた気持ちになり、持ちたいという気持ちを持ち続けても、もしも持てなかったら……と不安な気持ちになっています。

子供を持たない(持てない)ことは、結婚しても一人前じゃないという世代の祖父母・両親世代の話を聞いていたからかもしれませんが、持てなかったときに、どう自分の気持ちに折り合いを付けて生きて行こうかと悩んでいます。子供がいる人を妬ましく思ってしまうのではと、自分に不安も覚えています。

また、子供がいない事で、両親や姉(子有り)から、子育てしていない分、仕事をしていても暇だと言われる事に不快で悲しい気持ちにもなっています。

これからミモレ世代に突入するにあたり、アドバイスをいただけたらと思って相談いたしました。よろしくお願いします。

尼僧 掬池 友絢さんの回答
A.
私自身は人生に紆余曲折があって、
「親以外の方にすごく育てられた」と感じております

STMさんの苦しみ、心よりお察しいたします。仏教の教えにある「四苦八苦」の中にも、子供を持てない苦しみは入っていますものね。
四苦八苦とは、「人生は思い通りにいかない」ということを意味しています。

「四苦」は、生きる、老いる、病む、死ぬ、の根本的な苦のこと。
「八苦」は、愛別離苦(あいべつりく/愛する者と別れること)、怨憎会苦(おんぞうえく/怨み憎む者と会うこと)、求不得苦(ぐふとくく/求めるものが得られないこと)、五うん盛苦(ごうんじょうく/心と体が思うようにならないこと)です。


子供を持てないという苦しみは、この四苦八苦の「求不得苦」でもあります。
四苦八苦の概念を通して、お釈迦様は、「人生とは思い通りにいかないものである。だから苦しみも受け入れて生きていきましょう」と説いているのですが、それでもこういった苦しみを受け入れていくのは、本当に大変ですよね。

仮にSTMさん自身は受け入れることができたとしても、まわりの理解がないと、また新たな苦しみが生まれますよね。人とは案外、残酷な存在ですから……。
そこで今回は、私自身の体験から少しお話しをさせていただきたいと思います。

私は子ども時代、両親が忙しくてなかなか遊びに連れて行ってもらうこともできなかったのですが、その分、近所の方や檀家さんが話し相手になってくださったり、いろいろなところに連れて行ってくださったりしたんですね。その時間は私の中で宝ものとなっており、そのため私は、「親以外の方たちに、すごく育ててもらった」という想いを持っているんですね。その中には、子供がいない方たちもたくさんいらっしゃいました。

そのように、自分の子供がいなくとも“心の中の親”という存在にはなれるのかな、血縁がなくとも親子のような関係は生まれるのかな、と私は感じております。もしかしたらSTMさんも既に、誰かにとって「この人がいてくれて良かった」と思われる存在になっているかもしれません。

それに、きっとSTMさんは子供がいない方の苦しみに寄り添うこともできる方なのではないかと思います。
お釈迦様の言葉そのままに、「苦しみも受け入れましょう」と言ってしまうには、あまりにも辛いご相談でしたので、このような私的なお話をさせていただきました。簡単に割り切れることではないと思いますが、一つの見解として、心に留めていただけたらと思います。

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PROFILE
  • 掬池 友絢さん1975年生まれ。浄土宗僧侶。ILAB(国際仏教婦人会)役員。静岡県三島市にある蓮馨寺に所属。会社員として働く一方で、仏教の良さを伝え広めるべく様々な活動に取り組んでいる。蓮馨寺で「お念仏の会」や「お寺BBQ」といったコミュニティ活動の他、月に1回、寺子屋ブッダの「友絢さんとお茶を飲む会」で女性向けお話し会の講師も務めている。著書に『泣きたいときには泣いていい』(講談社)がある。 この人の回答一覧を見る
  • 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『with』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る