エンターテインメント業界が少しずつ動き出して、水川さんはこの主演映画のほかにも、この秋は2本出演作がありました。『ミッドナイトスワン』『喜劇 愛妻物語』など、話題作への出演が続いています。女優として、自分とはまったく異なる人間の人生を生きる、というのはどんな感じなのでしょう。

水川:お芝居をするという仕事には“魅力”しか詰まっていない!とそう思います。脚本に書かれた、まだ誰も演じたことない、まっさらな誰かについて「この人は何か好きなんだろう」「なんでこういう行動を取るんだろう」って真剣に考えるって、よく考えたら変な仕事です(笑)。でも、それを一生懸命演じた役や作品を観てくださった方々が、元気になったり勇気をもらったり楽しんでもらえていると思うと、こんなにも嬉しいことはないですね。逆にしんどいなぁって思うことがあるとしたら、常に時間がないことくらいかな(笑)。それ以外はすごく幸福な時間を過ごしています。一緒に作品をつくる人たちがみんな同じ方向を向いているという、とても恵まれた環境のお陰ですね。

映画の中で、水川さんが演じる翠とその夫・拓己(水橋研二)は同じ美術関連の仕事をしています。。翠が着実にキャリアを重ねていく一方で、拓己はなかなか目が出ないという状態です。同業だからこそ生まれてしまう問題が夫婦生活に影響を及ぼすことがあります。

映画『滑走路』より ©2020 「滑走路」製作委員会

水川:お互いのいる位置が近く、しかも“芸術”という分野になると努力の話ではなく、才能やセンスが決め手になってしまいますし……。翠と拓己の二人の関係に関して言うなら、お互いの才能を「素敵だな」と思えなくなってしまったことが、夫婦関係を続けられなくなってしまった原因なのでは、と思います。

 

水川さんは今年37歳。これから先、今まで以上に重要な役回り、立場で女優として活躍されることになりそうですが、まさにミモレ読者も重要な責任を背負って社会と関りを持っていく世代です。最後に、この年齢に到達したからこそ、改めて“女優”という職業で目指すゴールやチャレンジしたいことについても伺いました。

水川:お芝居を長く続けていきたい、というのが一番チャレンジしたいことです。役としていろんな作品に携わっていきたいと思います。だから、自分の中のゴールはまだ分からないですね。もしかしたら今までとまったく違うことを急にやりたくなるかもしれませんが(笑)、与えられた役を、ひとつひとつきちんと全うしていくこと。作品の中でちゃんと役柄を消化できるように――。そんなふうに思っています。

 

水川あさみ Mizukawa Asami/翠役
1983年7月24日生まれ、大阪府出身。
近年の主な出演作は『明日の記憶』(06/堤幸彦監督)、『今度は愛妻家』(09/行定勲監督)、『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』(11/本田隆一監督)、『バイロケーション』(14/安里麻里監督)、『太陽の坐る場所』(14/矢崎仁司監督)、『福福荘の福ちゃん』(14/藤田容介監督)、『後妻業の女』 (16/鶴橋康夫監督)、『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』(20/成島出監督)など。公開 待機作に『喜劇 愛妻物語』 (9月11日公開/足立紳監督)、『ミッドナイトスワン』(9月25日公開/内田英治監督)、『アンダードッグ』(11月27日公開/武正晴監督)がある。

<映画紹介>
『滑走路』
11月20日(金)全国ロードショー

©2020 「滑走路」製作委員会

厚生労働省で働く若手官僚の鷹野は、激務の中で仕事への理想も失い無力な自分に思い悩んでいた。ある日、 陳情に来た NPO 団体から非正規雇用が原因で自死したとされる人々のリストを持ち込まれ追及を受けた鷹野は、そのリストの中から自分と同じ 25 歳で自死した青年に関心を抱き、その死の理由を調べ始めるが──。

©2020 「滑走路」製作委員会

出演:水川あさみ 浅香航大 寄川歌太 木下渓 池田優斗 吉村界人 染谷将太 水橋研二 坂井真紀

原作:萩原慎一郎「歌集 滑走路」(角川文化振興財団/KADOKAWA刊)
監督:大庭功睦 脚本:桑村さや香
主題歌:Sano ibuki「紙飛行機」(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
撮影:川野由加里 照明:中村晋平 録音:西正義 装飾:小林宙央 音楽:永島友美子
編集:松山圭介 VFX:田中貴志 助監督:桜井智弘 制作担当:赤間俊秀 製作:「滑走路」製作委員会、埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 制作プロダクション:角川大映スタジオ、デジタルSKIPステーション 
配給:KADOKAWA 
©2020 「滑走路」製作委員会
PG12
公式 HP:kassouro-movie.jp

撮影/塚田亮平
 スタイリング/番場直美
 ヘア&メイク/岡野瑞恵
取材・文/前田美保
 構成/川端里恵(編集部)
 
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