眠るための「今、ここ」を意識する方法
たとえば、仕事で忙しい一日を終えて帰宅し、夕食を食べ、それからTVを観たりしてリラックスできたと思っているような夜、TV番組に夢中になっている間はよかったのですが、ベッドに入ったとたんに落ち着かないそわそわした気分になることはないでしょうか。
誰かといたり、家事や仕事などで忙しくしていると、その間は思考が頭の中の背景の雑音でしかないことがあります。それに対処せずに1日を過ごしてしまえば、静かでなんの邪魔も入らない状態で眠りにつくためにベッドで横になった時に、思考をより意識してしまうのは当然のことです。
何か具体的なことについて考えることもあるかもしれません。ただ心が落ち着かず、次から次にいろいろな考えが浮かんでは消えていくこともあるかもしれません。そして、その思考を締め出そうとすればするほど、ますます湧き出てくるようにも思います。
これはあなたの想像力が活発になりすぎているというだけではありません。眠れないことについてさかんに考えはじめると、おのずとさらなる思考を生みだしていることになります。しかもそれに必死になることで、同時に緊張状態を生んでしまいます。思考や感情に抗おうとすればするほど緊張は生まれ、その緊張が体にも伝わりさらに眠れなくなるのです。
これからお伝えするエクササイズは、なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚めるなど、あらゆる種類の不眠に効果的です。
夜、自分の心の理解を深めるためのエクササイズ
このエクササイズはあおむけに寝て行うのがベストです。心地よく横になったら、5回深呼吸します。「10分間瞑想」と同じように、鼻から吸って口から吐きます。吸う時には、肺が空気で満たされ、胸がふくらむのを感じてください。吐く時には、その日の思考や感情が遠くに消えていき、体のこわばりや緊張がほぐれていくのをイメージします。こうすることで、エクササイズに向けて心と体の準備を整えることができます。
1.全身をスキャンして呼吸を感じる
今、体と心で感じていることに意識を向けてください。焦っても眠りには入れませんから、このパートには十分に時間をかけてください。様々な思考が頭を駆け巡るのは、ごく普通のことですのでとりあえずそのままにしておきましょう。どんなに落ち着かないものや不安なものでも、考えに抗おうとするはやめましょう。
次に体に感じる感触に注意します。体重はマットレスに均等にかかっているでしょうか。また聞こえてくる音を意識してもいいでしょう。眠ろうとしている時、音は特に邪魔に感じますがそれには抵抗せず、その音に注意を向け30秒ほどそのままでいた後、また体に注意を戻します。
頭からつま先まで全身を心のなかでスキャンしてみてください。こわばったり緊張しているところがないか観察します。リラックスして心地よく感じるところ、そして不快に感じるところを両方感じるようにしてください。これを数回繰り返してもいいでしょう。
次に呼吸です。10分間瞑想と同様、呼吸法にこだわる必要はありません。呼吸が深いか浅いか、長いか短いか、不規則か安定しているかなどを観察します。力む必要はありません。ただ、動きに意識を向けるだけです。数分繰り返したら次のパートに移りましょう。
2.心のなかで一日の出来事を眺める
次はその日一日を振り返ってみましょう。まず目覚めた直後、覚えている限りでその日最初の瞬間を思い出します。起きた時の気分はどうでしたでしょうか? あとは脳に任せてその日の出来事や会話などを再生してみてください。このパートにはあまり時間をかけず、3分ほどで済ませるようにしてください。
心が一日を再現しているあいだに、いやおうなく新しい考えにとらわれ、はまりこみそうになることがあるでしょう。ですが考えてはいけません。そっと心の中に映し出されるその日の出来事を眺めるだけにしておくようにしましょう。
3.体のスイッチを切るイメージ
最後に、再び体の感覚に注意を戻します。左足の小指に意識を向け、そのスイッチを切るところをイメージします。小指に意識を集中しながら、心の中で「スイッチを切れ」「休め」と唱えてもいいでしょう。筋肉や関節、骨に「翌朝までは必要ないから、今晩はスイッチを切ってよし」と許可するようなイメージです。それを足の指から土踏まず、かかと、足首、膝下……という具合に腰まで同じように続けます。
そしてさらに、胴体から上がって肩から腕、手、指に下がり、次に喉、首、顔、頭と続けます。緊張がほぐれた感覚、もう体を動かす必要はなく、そのコントロールを手放したという感覚をしばし楽しむようにしましょう。
ここまできたら、あとは好きなだけ心をさまよわせてあげましょう。次から次に浮かぶ連想にまかせ、眠りに落ちるまで好きなこところに行かせてあげてください。
もしもまだ眠くならなかったら
ここまでたどりつくまでに、眠りに落ちそうになることは大いにあることなので、その場合には眠ってしまってかまいません。また眠くならなくても心配はいりません。これはただ眠るためのエクササイズではなく、夜の自分の心に対する意識や理解を深めるためのエクササイズだからです。
これから説明するのは、眠りのためのエクササイズとしてはとても効果的です。1000からはじめて、ゼロまで逆に数を数えます。眠りにつくまでのあいだ、心を「今、ここ」に集中させておくためのすばらしい方法です。
このエクササイズは「本気でゼロまで数えるつもり」でやることが大切です。眠りに落ちるための手段として考えるのではなく、心と体がスイッチを切るまでのあいだ、自分を集中さえておくためだけのエクササイズだと思ってください。
本書の訳者はあとがきで「私はとくに眠るときのマインドフルネスが役に立っていて、すんなりと眠りにつけるので助かっています」と述べています。
<書籍紹介>
『頭を「からっぽ」にするレッスン 10分間瞑想でマインドフルに生きる』
アンディ・プディコム著 満園真木訳 ¥1400(税抜)辰巳出版刊
ビル・ゲイツが読みながら実践している、マインドフルネスと「10分間瞑想」入門の決定版!
瞑想は心のエクササイズ、よりよく生きるためのツールです。そしてそれは、マインドフルネスを実践するために、最適なコンディションをつくりだすためのテクニックにすぎません。自分の心の中に、つねに静かで澄みわたった場所があるのを、いつでも帰れる場所があるのを想像してみてください。瞑想のための10分間は、1日をすべて自分のものにするための時間です。瞑想しなかった日をやめてしまう言い訳にせず、毎日続けてみてください。頭が「からっぽ」になる瞬間は必ず訪れます。
前回記事「ビル・ゲイツがハマった「10分間瞑想」で、不安もイライラも楽になる?」>>
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