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【皇室の変革】天皇陛下と雅子さまの「新しいご公務」の模索

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「立皇嗣の礼」を経ないとできないことがある


昨年4月19日に予定されていた秋篠宮さまの「立皇嗣の礼」も、コロナ禍のために11月8日まで延期されました。

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写真/宮内庁提供

「『立皇嗣の礼』をもって、令和の天皇の即位に関する御大礼がすべて終わりました。
『立皇嗣の礼』は、次の天皇を国内のみならず世界に発信するという大きな行事で、各国の大使や外交団などを招待してお披露目する予定でした。
しかし今回は唯一、日本にいる外交団長しか招くことができませんでした。それは少し残念でしたね」

外国では、立皇嗣は「クラウンプリンス」と呼ばれ、次の天皇となる皇太子を意味します。しかし実際には、皇室の定められた儀式を経ないと真の皇太子の役割は果たせません。

「皇室では宮中祭祀というさまざまな神事があります。その神事のときに、『立皇嗣の礼』がすんでいないと天照大御神をまつっている賢所(かしこどころ)というもっとも格の高い建物の中には入れず、他の皇族と同じように前のお庭から儀式を見なければなりません」

次の天皇になることを神さまに奉告する儀式を経ない限りは、神様の前に登壇できない、ということなのです。

「儀式は縮小されましたが、『クラウンプリンス』としての立場が内外ともに確立したという意味でも、、『立皇嗣の礼』が昨年中に無事にできたのはなによりでした」

 


雅子さまのお声も聞けた「新年ビデオメッセージ」


そして今年1月1日、天皇陛下と雅子さまから新年にあたってのビデオメッセージが公開されました。天皇皇后両陛下がそろってビデオメッセージを出されたのは、初めてのことです。そこに新しい令和の皇室の方向が示されているようです。

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写真/宮内庁提供 動画はこちらより

「毎年1月1日には『新年祝賀の儀』という国事行為が行われます。
例年なら翌2日には新年一般参賀が行われ、皇族方が揃い、皇居・宮殿の長和殿のベランダから天皇陛下が新年のメッセージを国民に直接お話し、新しい年をともに寿(ことほ)ぎます。
しかし、コロナ禍の影響で新年一般参賀が取りやめになったことから、ビデオメッセージを公開することになったのです」
 

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通常、1月2日に長和殿のベランダから語られるのは、1分にも満たないお言葉です。ところが今回は新型コロナにふれないわけにはいきませんでした。

「ビデオメッセージの中にどの程度コロナについてのお言葉を盛り込むのかが、工夫のしどころ」と、大久保さんは考えていました。ところが、メッセージのほとんどがコロナ禍の国民を案じて収束を願う内容だったのです。

「平成時代の天皇陛下は、2回ビデオメッセージを出されています。
初回は、2011年の東日本大震災の5日後のメッセージ。2回目は、2016年のご退位の意向を強くにじませたビデオメッセージです。
ともに大災害という日本にとっての緊急事態であったり、ご退位という皇室の大転換期であったりという、非日常時的な流れの中でのメッセージでした」

今回の天皇陛下と雅子さまのビデオメッセージは、新年を迎えるという日常生活の流れに添ったものでありながら、コロナ禍において国民に正面から向き合い、思いを伝えたものとなりました。
まさに待ち望んでいたお言葉だったのです。

ビデオメッセージの最後には、雅子さまがコロナ禍を耐える国民をねぎらい「少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします」と話しかけられました。やさしいお言葉に、胸が熱くなった国民も多かったことでしょう。
 


大久保和夫(おおくぼ・かずお)
毎日新聞客員編集委員。宮内庁を中心に、皇宮警察をはじめとする皇室関連の取材を続けている。皇室を通して日本と日本人について考えることを大きなテーマにしながら、70歳を過ぎても現役記者として活動している。

●聞き手
高木香織(たかぎ・かおり)

出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に、『愛のダイアナ』( 講談社)、『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』( ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』(講談社)、 カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、 『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

 

本文、キャプションは過去の資料をあたり、
敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、
その当時のものを使用しています。
取材・文/高木香織
構成/片岡千晶(編集部)

前回記事「【皇后・雅子さまファッション】輝くゴールドと神聖なホワイトの眩い美しさ」はこちら>>

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