ミモレのコミュニティ〔ミモレ編集室〕の梅津奏です。

毎朝目覚めた瞬間に更新を確認し、歯磨きしながら夢中で読み、出社すれば向かいの席の先輩に「今日の展開はですね~!」を熱く説明していた連載小説があります。

東京カレンダーWEBで連載されていた、「崖っぷち結婚相談所」、「私、港区女子になれない」「二子玉川の妻たちは」……。

毎週アップされる、現代を象徴するような濃い人間模様を描いた連載小説。どの小説にも、憧れや共感だけではない麻薬のようなフックがあって、更新が待ち遠しくてたまりませんでした(聞けば連載当時、約60万PVを叩き出すシリーズもあったとか)。
 

「これは絶対、バブル時代を経験した男性が書いている小説」


この確信が裏切られたのが2020年秋のこと。

 

東京カレンダーWEBにて特に人気だった二作が書籍化。文庫本の著者プロフィールを読んで、安本由佳さん・山本理沙さんという二人のアラフォー女性が共作していたということを知り、ひっくり返るほど驚きました。

すぐにInstagramで二人のアカウントをフォローし投稿を追いかけていると、講談社のミモレで新作小説の連載が始まるというアナウンスが。私はもう一度ひっくり返るはめになりました。
 

「え、東カレライターがミモレで連載小説?!」


ウェブマガジン、『mi-mollet(ミモレ)』。

人生の第二ステージに入ったミドルエイジ世代の女性がメインターゲット。仕事人・家庭人としての役割に捉われず、人と比較せず、変化を前向きに捉えて一歩前に踏み出そうというメッセージを打ち出している、ライフスタイル全般をカバーするウェブマガジンです。

正直なところ、東京カレンダーWEBとミモレが体現する価値観・コンセプトは全く違います。

安本さんと山本さんが東京カレンダーWEBで描いてきたのは、マニュアル化されたハウツーやテクノロジーを駆使した都会の婚活事情、港区や二子玉川のようなある種記号化されたエリアを舞台としたドロドロ人間関係……。

ミモレ読者は、ミモレに「そういうドラマ」は求めていないのではないかなぁ。お二人の小説が持つ東カレ的なドラマティックさが、冷静で柔らかいトーンのミモレの誌面で悪目立ちしてしまうのではないかと、勝手に心配していました。