40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。

これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。

 


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別居中の“面会交流”は「子どもの権利」 

「夫を懲らしめたいわけじゃない」DV被害者の妻が、離婚調停を経て悟った幸せの形スライダー1_1
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「……ねぇみーくん。パパに会いたい?」

ベッドの中で、美穂は息子の髪をそっと撫でながら言った。

「え……」

眠たげだった瞳がわずかに揺れ、湊人は上目遣いで母親の顔色を伺う。

夫の暴力がきっかけで美穂の実家で暮らすようになってから、父親の話題は滅多なことでは会話に上がらなくなった。

湊人は子供なりに事情を理解しようと努めているようで、美穂を気遣う発言をしたり、祖父母の前では必要以上に甘えた態度をとることもある。

そんな息子の健気さに感謝と後ろめたさを感じながらも、彼が本心では父親を恋しく思っているのは痛いほど分かっていた。

貴之の怒りが息子に向いたのは一度だけだが、もちろんそれを許す気は断じてない。

けれど少なくとも、美穂が長年夫のモラハラに耐える中で、彼が我が子に対しては真摯な愛情を注ぎ“良い父親”であったことは事実だ。その認識は、冷静になった今でも変わらない。

「みーくん、正直に言って大丈夫だよ。パパと遊びたい?」

自身の感情が滲まないように、美穂はできるだけ優しく問う。

面会交流とは、“子どものための権利”だと弁護士から聞いた。ならば息子の意思を尊重し、彼に判断を委ねようと決めたのだ。

「……うん」

しばらくの沈黙の後、湊人は涙声でそう答えた。

美穂は胸の奥に鈍い痛みを感じながらも、息子をぎゅっと強く抱きしめた。
 

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