大好きな気仙沼のファンを増やすことが目標
2011年3月11日、仙台市青葉区の自宅から離れた泉区のアルバイト先で被災した織笠有加里さん。交通も通信も寸断され、情報がまったく入らない中なんとか自宅に戻り、災害の大きさがわかったのは3日後でした。
発生から2週間が経ち、津波で大きな被害のあった名取市閖上地区を訪ね、街が破壊されている様子を目の当たりにしました。実家が、そして家族が無事ということがありがたいことだと身に染みて感じたといいます。
近所の炊き出しを手伝ったものの、少しずつ日常が戻り始めると、「あの怖い風景は見たくない、普通の日常に戻りたい」と感じはじめ、ボランティア活動から少しずつ遠ざかりました。
震災直後に進学した大学では、研究室の活動の場が気仙沼市だったため、2012年から定期的に通うようになった織笠さん。地元住民は自宅や思い出の品など多くを失いながらも、力強く生きる姿が印象的でした。県外から何度も足を運ぶボランティアにも出会い、中には同世代もいて「私は何もしなくてもよかったのか?」と考えさせられたといいます。
大学卒業後、一度は民間企業で働いたものの、心の中にくすぶった「?」の思いが消えることはなく、その後気仙沼に移住。現在は一般社団法人気仙沼地域戦略の職員として、観光を通じて地域を元気にしようと日々、仕事に向き合っています。
「震災は哀しい出来事ですが、私の人生を良い意味で変えてくれました。今はこの街に住み続けたいと思っています」
気仙沼で出会った人が大好きな織笠さん。その「好き」を発信して、「気仙沼ファン」を増やすことが目標です。
<書籍紹介>
『きみは「3.11」をしっていますか? 東日本大震災から10年後の物語』
(小学館)
漫画/細野不ニ彦 ノンフィクション/平塚真一郎 解説/井出明 特別協力/河北新報社
命の大切さを伝える「3.11」の物語集。東日本大震災から10年……。あの日何があったのか、あれから何が起こったのか。知られざる物語を、ドキュメント漫画・ノンフィクション・インタビュー・豊富な記事・解説でまとめます。未来を見つめる一冊です。
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