ミッション「正常性バイアスを打破せよ!」


サッカーチームの保護者会で大地震の備えについて話したときに、「大地震で一番心配なことは何ですか?」と質問したことがあります。家族の安否確認方法、避難所生活、非常持ち出し品などたくさんの心配事が寄せられましたが、ある共通点がありました。

それは、大地震発生時の「命の危機」から目を背けている、という点です。

誰も、大切な家族が地震でけがをするかも、命を落とすかもなどということは考えたくないものです。これは「正常性バイアス」といって、自分に都合の悪い情報を無視したり、過小評価することで心を平穏に保とうとする、正常な反応です。しかし、災害では邪魔になることがあります。命の危機を想定した備えができなかったり、避難が遅れたりするのです。

「大地震が発生した瞬間いかにして命を守るか、そのために普段できることは何か」を考えてもらうために、地震について話すときは、「今ここで大地震が発生したら、どうやって身を守りますか?」と問いかけることにしました。次に、東日本大震災が発生した平日の午後2時46分、さらに阪神・淡路大震災が発生した午前5時46分に地震が発生したら、どうやって自分や大切な人の命を守ることができるかを考えてもらうのです。

すると、たくさんの疑問が出てきます。タンスが倒れてけがをするかもしれないから何か対策しなければ、オフィスに身を守れる場所があっただろうか、通学路の危険はどうやって回避しよう…。たくさんの疑問に対してこちらが正解を示すばかりではなく、参加者がアイデアを出し合うワークショップに発展することもあります。
皆さんも想像してください。このブログを読んでくださっている瞬間、大地震が発生したら、どうやって自分や大切な人の命を守りますか?

消防少年団という地元小中学生中心のクラブ活動では、緊急事態宣言発令中のためオンライン活動に挑戦。この日は、災害時に役立つロープの結び方を消防士さんに教えてもらいました。


これからの防災


新型コロナウイルス感染症によって私達の生活は大きく様変わりしました。防災の視点で心配なのは、人とのつながりが希薄になることです。


「自助・共助・公助」という言葉をご存じでしょうか。災害が発生したとき、まず自分自身の身の安全を守る「自助」、近所や地域コミュニティで助け合う「共助」、公的機関が救助、救援する「公助」の連携が不可欠です。しかし、どれかひとつが欠けてしまうと、助かるはずの命が助からなかったり、被害が拡大してしまう懸念があります。特に「共助」では人とのつながりが不可欠ですが、コロナ禍で希薄化が一層進んでいるように感じられます。

 

また、最近では2月13日の福島沖地震、3月5日のニュージーランド沖での地震などが発生しており、災害はコロナ禍だからといって待ってはくれません。オンラインなど新しい手段を開拓し、かつ、「人とのつながりを意識した防災情報」を提供していくことが、これからの防災に求められていると感じています。

現在コロナで中断してしまっているのですが、「防火防災コーディネーター」を増やそうという取り組みをしています。災害発生時、避難に支援が必要な高齢者や障がい者の方と同じ地域にお住いの方々をつなげる試みです。

介護に携わっているケアマネジャーの方々と一緒に、災害対策が必要な高齢者宅を訪問しているのですが、その時に、町会の役員さんや民生委員さんに同行していただき「このお宅は、災害が発生したら近隣で避難を手伝う必要がある」と認識してもらうのです。

平成30年の西日本豪雨災害では、支援が必要な高齢者の方々が自力避難できずに亡くなりました。行政が先導して事前に対策を立て、協力して避難できれば助かったのではないかと言われています。

図書館とのコラボ企画。震災対策の展示企画を持ち込んだところ快諾してくださり、110冊の震災や防災関連図書と一緒に、家具の転倒防止対策について展示しています。


ここで、防災について考えていただけるサイトをご紹介します。

内閣府 一日前プロジェクト

「災害の一日前に戻れるとしたら、あなたは何をしますか」と、地震や水害の被害に遭われた方に問いかけ、様々な体験談が寄せられています。学びの多いサイトです。


「ミニマムな暮らし」で大切な人の命を守る


これを読んでくださっている皆さんに取り組んでいただける防災のひとつとして、今注目されている「ミニマムな暮らし」をご紹介したいと思います。

東京消防庁が実施した近年の地震被害調査では、けがをした方の約40%が家具の転倒などによってけがをしています。家具の下敷きで動けなくなったり、火災や避難障害など多くの危険をもたらします。
 

そこで、家具の数やレイアウトの見直しをしてみませんか? 一番は、家具をできるだけ置かないことです。断捨離で「持たない暮らし」「ミニマムな暮らし」は防災にも効果的です。

そうは言っても難しい、という場合はレイアウトを工夫してみましょう。ドアやベッドの近くには家具を置かない、生活空間にはできるだけ家具を置かないようにして避難経路を確保してください。どうしても家具を移動できない場合は最後の手段として、転倒防止器具を取り付けましょう。ホームセンターなどで購入できます。

室内の地震対策について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック


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