皆さん、こんにちは。梅津奏です。

遡ること十数年前の春。
地元の大学を卒業し、就職の為に上京した私。

職場には、私と同じく地方出身の人もいれば、東京の人、関西の人、海外で育ったという人もいました。当時の私にとっては、まさに「人種のるつぼ」。

先日、KITTEガーデンから眺めてきた東京駅。

その中でも、東京で生まれ育ったという人を見ていて感じたのは、「みんな、あっけらかんと明るくて親切だな」ということでした。都会の人って、もっと現実的でシニカルな感じかと思っていたんですよね。

私にとって重要なアイデンティティである「地方出身」というフラグ。
今日はそれをキーワードにして本を選んでみました。


「葡萄が目にしみる」林真理子

 

元祖、「地方出身、東京在住」の女性の作家といえば、林真理子さん。パワフル・エネルギッシュという言葉がこれほど似合う女性はなかなかいません。林さんのメガワット級の自家発電装置、私も欲しい。


そして東京に行けばいい。東京の大学生になったら、すべてを忘れてしまおう。ほこりっぽいセーラー服を着た少女だったことや、葡萄のジベ液で手を桃色に染めたこと、その他ぜんぶ、たくさんのこと。


うん、私も東京に出るときこう思っていたし、実際、「上京以前・以後」で人格が少し変わったと思います。人生を一度リセットしたような感じ。

林真理子作品といえば、強いハングリー精神をもつ登場人物が魅力の一つ。現実が辛いとすぐ、「私、上昇志向とか無いので」「ゆとり世代なんで」と白けた風を装いたくなるのですが、「あなた、本当にそれでいいの?」と真理子さんがこちらをじっと見ている…、気がする…。


「黒と茶の幻想」恩田陸

 

利枝子、彰彦、蒔生、節子は大学の同級生。四十代を目前とした彼らは、ひょんなことから揃って屋久島旅行に出かけることに。仕事や家庭のことは束の間忘れて、非日常の旅を楽しんでいた四人組ですが、いつの間にか話は学生時代に起きた「あの事件」の真相に迫っていき…という物語。

私が一番好きな恩田陸作品です。何度読み返したか分からないし、読むたびに違う登場人物に感情移入するし、新しい発見があるし、それを誰かに話したくなる。刺さるフレーズの宝庫なのですが、今日は「地方出身というアイデンティティ」の表現で、これまで読んだもの中で一番しっくりきた箇所を引用します。


地方の進学校を出た奴は、みんななんとなくどこかが似ている。曇りのない健全さ、自分たちの田舎くささを自嘲しつつも自慢にしているような、確信犯的な健全さを感じるのだ。(中略)ゆるぎない価値観の中で、疑いも迷いもなく生きてきた彼等は、自分という存在に満足しているように見える。


四人の中で唯一の東京出身者である彰彦が、残りの三人を観察した感想です。そう、私たちには独特の心の伸びやかさがあると思う。小さい世界だったかもしれないけれど、人生の要所要所をきちんと満たされて生きてきた、というような。


「ここは退屈迎えに来て」山内マリコ

 

山内マリコさんの小説が原作となった映画、「あのこは貴族」が公開中。山内さんは、「シスターフッド(女性の連帯)」小説の書き手、というイメージがすっかり定着しましたね。

私が初めて読んだ山内作品が、この「ここは退屈迎えに来て」。「田舎」というほど風情のない「地方」を舞台に小説を書くという切り口を、とても新鮮に感じました。


それでも高い家賃や過酷な電車の乗り換えに耐えて東京に住みつづけたのは、都会のヒステリックなテンションがいろんなものを紛らわせてくれて、それが心地よかったからだ。(中略)でもそんなのはもうぜんぶ、嘘か幻みたい。いまはこの、ぼんやりトボケた地方のユルさの、なんとも言えない侘しさや切実な寂しさだけが、すごくすごく、本当に思えた。


子供の頃から、「いつかは東京に出なければならない」という意識がありました。親や先生にそう言われた訳でもないのに、なぜそんな強迫観念を持つようになったのだろう。仙台で暮らしていて、別に不便も不満も無かったんですけれど。

上京してきたことを後悔したことはありませんが、私にもこの小説の登場人物のように、「地元で暮らしていた頃の自分/生活が本当だ」という意識があるように思います。そういう尺度のようなものがあることは、幸運なことなのでしょうか?


こんな感じでしょうか。
今日は著者の年齢順に本を並べてみました。

早く仙台に一時帰国したいな~。

 

映画「あのこは貴族」、素晴らしかったです。「女の敵は女」なんていう、誰が作ったか知らないおかしな呪文は捨ててしまいましょう~。ミモレでは、バタやんさんとブロガーの小黒悠さんが記事に書いてらっしゃいましたね!まだ観ていない方、ぜひぜひ。
映画を観たことをきっかけに山内マリコさん祭り(山内作品をひたすら読むお祭り)を繰り広げていたら、なんだかキラキラしたものを身に着けたくなり。ラリックでブレスレットを購入しました。春は色々動揺する季節ですが、無事乗り切れますように。